平方幼稚園&「学校統廃合」問題の本質は「上尾の教育をどうするのか」です

再選された市長が、極めてあいまいな表現ながら「見直すべきところは見直す」「学校再編はゼロベースで考える」と市長選挙前に言わざるを得なかった「学校施設更新計画=学校統廃合計画」。

実は、この問題は「これからの上尾の教育をどうするのか」という「教育論」としての本質を問わないまま、やたらと施設の耐用年数や予算の35%削減などばかりを強調する上尾市教育委員会(とりわけ教育総務課プラス教育長&教育委員たち)が、市政への批判的観点無しに、かつ自分たちが教育委員会として無反省に突っ走ろうとしているという意味で、平方幼稚園問題とよく似ています

今年最後になる今回の記事では、このことをあらためて問い直してみたいと思います。

※リンク先の記事(アンダーライン・色替え)も含めると、今回はいつもより長くなりました。正月のつまらないTV番組に飽きた時にでも、ゆっくりとお読みください。

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No.199

🔶「平方幼稚園」と「学校統廃合」問題の類似点
「平方幼稚園」をめぐる問題と「学校施設更新計画=学校統廃合」問題には、非常に似通った構図が見て取れます。
表にまとめると、次のようになります。

①「上尾の教育をどうするか」や、「今ある学校(幼稚園)を子どもたちや保護者・市民の視点からいかに維持・発展させるか」という教育的観点を軽視したまま、机上の計算で施設の耐用年数や予算35%削減などを示す上尾市教委事務局(とりわけ教育総務課)の主導で突っ走っていること。
②「(予算削減等の)市の方針には逆らえない」と言い放ち、教育委員会としての独自の意見を示さずに、教育総務課の提案を丸ごと認める弱腰の教育長
③教育総務課の提案について、差し障りのない範囲でコメントはするものの、基本的には追認する役割しか果たさず、互いの議論も全く無い教育委員たち

以前から当ブログでは、読者の方からの指摘も受けながら、4回にわたり平方幼稚園問題を特集してきました。それをまとめてみます。

記事No. タイトルとおよその内容
No.122 平方幼稚園問題は、教育長と教育委員会の致命的大失策(その1)
*表面は保護者の意見を聞くようなふりをしながら、平方幼稚園の閉園を執拗に狙う教育長&教育委員たちと事務局、それに反対する良識ある保護者や市民という構図。2019年6月の定例教育委員会「平方幼稚園の在り方について」は非公開での協議でコソコソ。
No.123 (その2)*時系列での検証。教育総務課長の「説明」について何も言わない教育委員たち(2019年11月定例会)。これについては2019年12月の文教経済委員会で市議からその杜撰さを指摘される。
No.124 (その3)<市民に背を向ける>上尾市教委の体質が露見
どうせ非公開ですよ」と開き直る事務局職員。その非公開の教育委員会臨時会つまり密室で、保護者や市民にとって重要なことが決められてしまいました(2020.10.02)。現在は会議録は公開
No.125 (その4)池野教育長の本性は[その場しのぎ]
平方幼稚園の保護者や地域の方々の集まりに、たった1回出席しただけの池野教育長。そこでの発言は「その場しのぎ」「思いつき」にすぎないということが後日明らかになりました。外形的に保護者に寄り添うように見せかける発言は罪深いと言わざるを得ません。
(当ブログNo.125より)…上尾市教育委員会が市長経由で提出した「平方幼稚園廃園条例」が出席議員全員により否決されたことについて、教育長は「非常に重く受け止めている」などと口では言っていますが、条例提出までの教育長は「では廃園ということでいいですね」「(保護者や地域への)説明は事務局のほうでよろしく」などと軽く見ていました。その「ツケ」が回ってきたというのが実態です。

「教育的観点の軽視」という点で言えば「学校統廃合計画」も同様であり、やたらと施設の耐用年数や費用の35%削減ばかりを強調する教育総務課長の「説明」が繰り返されています。
さらに、教育委員会定例会席上においても、教育的視点での説明や見解を示すべき指導課からはひと言もありません。

🔶「研究発表」後の対応に疑問
平方幼稚園は、以前、幼保小連携ということで「研究指定」を受けていました。関連して、上尾市議会では秋山かほる議員と学校教育部長との間で、次のような質疑が交わされています(上尾市議会2021年3月定例会)。※強調のための色替えは筆者によります。

(上尾市議会2021年3月定例会)質問と答弁
(秋山かほる議員)  ……幼児教育というのは、その子が30年か40年たたないと成果が検証できないと言われるぐらいにいろいろな研究がされています。
いろんな種類があります。私立の幼稚園は採用しているという教育方針が違ったりするのですよ、皆さん。調べてみると、昔から自分の子どもをどういうふうにしようか、幼稚園に行くのか、保育所に預けるのか、どういうふうなのがベストなのかしらと、やっぱり最初の子どものときは悩むのです。そんなことも経験も多くの方がされていると思いますが、市内で唯一の公立幼稚園である平方幼稚園には幼児教育の長い実践があります。私は、それを32年間、最初の子は平方幼稚園ですから、32年間、この平方幼稚園を見てきております。県の委嘱を受けた事業なども実践してきました。平方小学校の校長が園長も兼務し、敷地内にあることもよい環境です。この歴史の中で、幼児教育をどのように実践されてきたのでしょうか。具体的な取組を示してください。
また、この3年間、私がいない間に廃園という、何ですか、これはというふうにびっくりしましたが、この3年間、平方幼稚園の実践と教育をどのように総括してきたのでしょうか。平方幼稚園は市内で1個しかないから。私が子どもを入れたときは勝田先生だったのです。園長先生はころころ代わるの、校長先生だから。何といっても市内22校ありますから、小学校は。代わるのです。ところが、幼稚園は1つしかないので、先生がずっといらっしゃって、ずっと研究なさるのです。入れたときには勝田先生。ずっと見ていて、次は大室先生です。彼はずっと平方幼稚園で幼児教育の実践をしているのです。ですので、この実践をどのように総括してきたのか。もし会議の日付、その内容の一覧等があれば示してください。
学校教育部長(瀧沢葉子) 平方幼稚園では、平方小学校と隣接していることを生かして、平成18・19年度に埼玉県教育委員会から幼稚園、保育所と小学校の連携推進事業の研究指定を受け、また平成24年度に埼玉県の親支援モデル施設育成事業の委託を受け、それぞれ研究発表を行っております。(中略)
平方幼稚園の実践と教育の総括につきましては、来年度まとめていく予定でございます。
(秋山かほる議員) たくさんの事例を平方幼稚園は持っております。幼児教育についての研究もされてきました。(中略)見事にこの幼稚園は対応しているなということを毎年見てきました。私がいないときに廃園というふうに条例案が出されたということで、議員になる前に。これをどういうふうに総括するのだろうというふうにずっと思っておりました。この幼稚園の歴史です。非常に大きな長い教育の歴史があります。それを来年度やると。閉園というのを出しておいて、一つもここをきちんと総括せずに、この宝物の平方幼稚園を閉じてしまう。とんでもないことです。まず最初に、この幼稚園の歴史と、この幼児教育の実践をきちんと総括してからどうするかを決めるべきであって、本末転倒です。
あなたたちは、この幼児教育の宝物を分かっていない。幼児教育というのは、その子の一生を決めるのです。世界では、これを調べて何十年、その子が30歳ぐらいまで、この幼児教育を検証しているデータがあります、いろいろ。いかに幼児教育がその子の一生を決めるかということについて、研究されている方もたくさんおりますので、まずこの上尾市の宝物をきちんと検証してください。それから後でも、閉園は遅くはありません。しかし、これだけのことをやってきたということを誇って、それを多くの市民の前に出していただきたい。それから今後を決めてくださいと強く要望いたします。

この市議会での質疑から、地域に根差した平方幼稚園について、14~15年前に県の研究指定、さらに9年前にも研究発表をおこなっているという事実がわかります。
驚くのは、瀧沢学校教育部長の「平方幼稚園の実践と教育の総括につきましては、来年度(=2021年度
まとめていく」という答弁です。
これについては、秋山議員の「閉園というのを出しておいて、一つもここをきちんと総括せずに、この宝物の平方幼稚園を閉じてしまう。とんでもないことです。」という指摘のとおりであると言えます。

すなわち、ほかの委嘱研究も同様ですが、「研究指定を受けても、当日の発表が終わってしまったら、あとは野となれ山となれ」ということの証左であると言えます。
それはつまり、上尾市教育委員会が「上尾市の宝物」である平方幼稚園を、いかに大事にしてこなかったかということだと考えられます。

🔶市議会での平方幼稚園閉園反対の意見から
2021年6月の上尾市議会定例会で、平方幼稚園を廃園にするという執行部案の条例に対して、多くの議員から反対意見が出されています。その中の池田達生議員の発言を見てみましょう。

(上尾市議会2021年6月定例会)廃園条例反対討論より
(池田達生議員) ……本年3月定例会において、この条例は、地元や保護者への説明が不十分であるとの理由で、全会一致で継続審査となっていました。
本年5月15日に平方小学校において、幼稚園保護者、幼稚園保護者OB、幼稚園児OB、そして平方の地元住民に対し初めての説明会が開かれました。
 最初に、執行部の説明があり、その後に出席者からの質疑がありました。しかし、市の説明に納得するとの意見は皆無でした。出された意見は、園舎の修繕、3年保育、給食の検討、園児募集方法など、園児の減少傾向に市は必要な手だてと努力をしてきたのだろうか。小中学校統廃合計画では、平方小学校が廃校となる予定と聞く。幼稚園も小学校もなくなることで子育てをする人は平方には来なくなるのではないか。平方の文化が消えることになる、寂しいことだ。
 平方幼稚園の卒園児で現在は中学3年の女子生徒は、姉は平方幼稚園に保育実習に入ったが、すばらしい幼稚園と言っていた。そんな公立の幼稚園を廃園にしていいのでしょうか。市長は直接説明をするべきではないでしょうかなどなど、皆さん切々と訴えていました。このように、この日の市の説明に地元の方々の合意が得られている状況では全くありませんでした。
 平方幼稚園保護者有志の皆さんからは、何回も市に対する要望書が出されています。その中で、平方幼稚園が市内唯一の公立幼稚園として、子どもの心や行動に寄り添い、責任を持って環境を整えてきた。特に配慮が必要な子もそうでないことも混じり合って生活し、学ぶことで相乗効果が期待できるインクルーシブ教育を教職員の専門性の高さと価値観から実施できている幼稚園、熟練の教職員が配置され、安定した幼児教育を提供できている。保護者と教職員が親密であり、相談体制が整い、何でも話し合える環境であるなどなど、公立幼稚園として長年積み上げてきた優れた幼児教育の実践と内容が語られ、改善の要望が出されましたが、十分な答弁はありませんでした。
 園児が少なくなるなど現実には運営が困難な状況があることも事実です。しかし、このような状況をつくってきたのは上尾市です。現在、公共施設の在り方が大きく問われています。今回の閉園ありきの市のめ方にも多々問題があります。  以上、議案第32号 上尾市立学校設置条例の一部を改正する条例の制定についての反対討論とします。

この池田議員の発言から、地域説明会参加者からの意見や、上尾市がいかに平方幼稚園を大事にしてこなかったがわかります。
地域説明会を開く前に、自分たちで恣意的に閉園条例を決めてしまうという構図は、「学校統廃合計画」と非常によく似通っています。

🔶幼児教育をどうするかという教育的視点が大切
最近、平方幼稚園を閉園すべきという意見が発信されているのを目にしました。しかしながら、その意見を見ると、「平方幼稚園閉園に反対するのは、幼児教育の理念はどうなるかという崇高な次元での意見である」などとし、明らかに教育的視点を避けている意見であることがわかります。
地域の説明会で実際にどのような意見があったのか、教育総務課や指導課、教育長、教育委員はどのような動きや発言をしてきたのか(あるいは何もしていないのか)を見極めたうえでの意見なら理解できますが、そうではありません。
ネットの匿名性のコメントを引用することなどは、教育的視点が欠落した「批判のための批判」であると言えます。
今必要なのは、教育的視点を基本にした論議であると考えます。

私は、現在このような事態(閉園はせず、園児募集はしない)になっている最大の要因は、上尾市教育委員会が市の宝物である平方幼稚園の存続と発展のための努力を十分にしなかったことであると考えます。
本当に平方幼稚園の存続のために力を尽くすのであれば、園児募集がままならない民間幼稚園と運営面で協力するなどの方策も考えられます。
園児募集については教育委員会で決定できるようなので、今一度考え直すことを強く望むものです。

年が明けても、「平方幼稚園」や「学校統廃合計画」の問題は続いていきます。
このブログでもお伝えしている「水泳授業の民間委託」や「小中一貫校」の問題も併せて、私は情報公開請求等で得た事実や根拠に基づき、引き続きこれらの問題にも高い関心を寄せていきたいと考えています