「住民監査請求」で見えてきたこと & まだ分からないこと

2月14日、私が提起した住民監査請求の「請求人による口頭陳述」が上尾市役所7階大会議室で開かれました。

「住民監査請求」と言うと、語感からしても、ハードルが高そうな気もします。
確かにそういう一面もあるかもしれませんが、監査請求のための情報(証拠)を集めたり、職員の話を聞く中で、現在の上尾市行政(教育行政を含みます)の実態や問題点も様々見えてくると私は思います。

今記事では、「今回の住民監査請求で見えてきたこと & まだ分からないこと」などについてお伝えします。 少し長いです(4600字超え)ので、お時間のある時にゆっくりお読みください。

No.206

🔶口頭意見陳述は「公開」と言うが
今回の口頭意見陳述の会場(7階大会議室)は比較的広く、傍聴定員は10人でしたが、傍聴者は7人でした。いずれも、当ブログをご覧になった方か、口コミで来ていただいた方たちです。

上尾市のHP(トップページ)には、「上尾市の基本情報」→「情報公開・会議の公開」というメニューがあります(下記参照)。市民の方は、それを見て、自分が関心のある会議を傍聴することが可能ということになります。

しかしながら、今回の「請求人による口頭意見陳述」は「情報公開・会議の公開」メニューに掲載されることはありませんでした。掲載されたのは、「監査委員事務局」の新着情報だけです(現在はすでに削除されています)
はっきり言って、「組織でさがす」→「監査委員事務局」まで行って閲覧するのは、よほど関心のある方しかいないのではないでしょうか。
「情報の公開」という点からすれば、今回の住民監査請求の口頭意見陳述は事前に「情報公開・会議の公開」メニューに掲載するべきでした。
以上のことは、住民監査を通じて「見えてきたこと」のひとつであると言えます。

🔶意見陳述の中身は
どんな内容なのかについては、前記事「1枚の写真から上尾市の不当な支出が露見。住民監査請求受理へ」でお伝えしましたが、口頭陳述の中身については以下のとおりです。

請求人による口頭陳述の概要(2月14日)
【1 対象となった公金の支出が、不当であると考えられる点】
岡田久美子氏の所属する(株)ビックカメラからの請求書の「件名」は、<岡田久美子パラリンピックイベント出演料(8月19日)>となっています。
この請求書の[件名]は、上尾市がビックカメラに発出した文書のとおり、「聖火ビジットに伴う競技体験イベントのご出演について」という依頼文書に基づいています。
すなわち、上尾市がビックカメラに依頼した内容は、あくまでも 「競技体験イベント」への出演ということになります。
あらためて「支出負担行為票」を見ると、摘要欄には「聖火ビジット イベントゲスト出演料」と記載されていますが、本来なら「聖火ビジットに伴う競技体験イベント出演料」と記載されるべきです。これは、8月19日の競技体験イベントが中止になったことから、「競技体験イベント」とは記載できなかったのではないかと思われます。
普通に考えれば、ビックカメラから請求書が届く前に「競技体験イベントは中止になったので支払いはできない」旨連絡するなりの対応がされてしかるべきです。つまり、実態の無い支出について起票したということになり、「不当な支出」であることは明白です。
追加で提出した「請求の要旨に関する新たな証拠」については、住民監査請求の対象となった支出行為に関して、「岡田久美子選手の競技体験イベントへのゲスト出演」についての契約書またはそれに類する文書・資料等は不存在であるという上尾市教委の文書です。要するに、住民監査の対象となっている支出負担行為は、契約書はおろか支出の根拠となる文書や資料も無い、実態の無い支出ということになります。
【2 なぜ競技体験イベントが中止になったのかという点】
岡田久美子氏が市長・教育長らと「懇談」した8月19日は、緊急事態宣言発令中であり、市民に対しては「不要不急の外出、県境を越える移動などリスクの高い行動を徹底的に避けましょう」と注意喚起していること。
そこで、当初岡田氏が出演する予定だった8月19日の「パラスポーツ体験イベント」は緊急事態宣言を受けて中止になっていること(これについては、上尾市としては賢明な判断であったと考えられます)。
これらの点から、岡田氏と市長・教育長らの「懇談」は全く必然性が無く、まさに不要不急のものであると言わざるを得ません。
市民には「リスクの高い行動を徹底的に避けましょう」などと注意喚起をしておきながら、自分たちは競歩選手との記念撮影をしているという事実があり、しかもそれを市のHPに掲載しているということは、ひとりの市民の私にはとても理解できません。この記念撮影の写真に強烈な違和感を覚えて、今回の住民監査請求に至ったということを監査委員にはお伝えしたい。
【3 岡田久美子氏の当日の動きはあくまでも「懇談」である点】
岡田久美子氏の当日の動きは、上尾市役所に滞在した時間は12:30~14:30で、ほとんどは市長・教育長らとの「懇談」に充てられていたこと。
当日上尾市役所で「聖火」展示がおこなわれており、岡田氏は13:30から約20分足を運んでいますが、この「聖火展示」は「パラスポーツ体験イベント」とは全く異なるものであることは「上尾市職員措置請求書」のとおりです。
【請求人が腑に落ちない点】
摘要欄の記載が正確でない点を考えると、なぜこのような「支出負担行為票兼支出命令票」を起票したのか、あるいは起票せざるを得なかったのか。
起票者以外に課長を含め5人が押印してあることが見て取れますが、中でひとりくらい「この支出行為はこのまま通しても大丈夫なのか」など、問題点を指摘してもよさそうなものですが、その痕跡が全く無い点。
緊急事態宣言の最中(さなか)でありながら、岡田久美子氏が上尾市を「訪問」していることや、市長・教育長など7人との「懇談」は、それこそ不要不急のものであると考えます。市民には「リスクを徹底的に避けること」などの注意喚起をしておきながら、自分たちは、言わば「勝手なことをしている」という事態は、極めて不信感を抱かせるものです。いったいなぜこのようなことを市長や教育長はしたのでしょうか。
【最後に】
出納室の役割として、計算や、費目、予算内の支出であるかについてはチェックをしていると思われます。しかしながら、支出の中身について、「緊急事態宣言中だが、イベントの出演料とはいったい何か?」というような確認がされていれば、もしかしたら今回のような不当な支出は避けることができたのではないかと、ひとりの市民として考えるところです。
*監査委員のみなさまには、上尾市職員措置請求書ならびに事実証明書と新たな証拠等を吟味していただき、厳正な監査をお願いする次第です。

今回の口頭意見陳述は以上のとおりですが、とりわけ「請求人が腑に落ちない点」に、今記事のタイトルにある「まだ分からないこと」が凝縮されています。
また、上尾市の出納室の仕事についても、私は当然支出に対してcheckをしていると思っていましたが、実際にはそうではないということも「見えてきたこと」と言えます。

 🔶今回の住民監査請求の扱いについて
私が提出した「上尾市職員措置請求書」に基づいた監査は、すでに始まっています。
口頭意見陳述はその一環として開かれたものです。
監査を実施し、(勧告をすることも含め)結果をまとめるまでの監査期間は、請求があった日から60日以内です。今回で言えば、3月28日がリミットとなります。

監査が始まっていることから、今回の住民監査請求の結果としては「棄却」か「勧告」のどちらかになります。

 「棄却」とは「監査の結果、請求に理由がないと認めるとき」で、監査委員は、理由を付してその旨を書面により請求人に通知するとともに、これを公表しなければなりません。

勧告」とは、「監査の結果、請求に理由があると認めるとき」で、監査委員は、議会、首長(市長)、関係職員などに対して期間を示して必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を請求人に通知し、かつ、これを公表しなければなりません。

🔶全国の市町村に見る「住民監査請求の結果」
総務省が公表している資料に、住民監査請求の結果をまとめた表があります。
最新のデータによれば、全国の市町村での住民監査請求の件数と監査結果は次のようになっています。(期間は2016.04.01~2018.03.31の2年間

住民監査請求の件数(全国市町村) 1,221件
上記の内、「取り下げ」件数 26件 (  2.1%)
却下」件数 579件 (47.4%)
棄却」件数 527件 (43.2%)
勧告」件数 41件    3.4%)

この表にあるように、「勧告」に至るのはわずか 3.4%となっています。
こうした状況が、たとえ住民が「これはおかしな支出だな」と考え、何とかしたいと思っても、住民監査請求の提起を躊躇させる一つの要因となっていることは否めません。
したがって、「このようなことが続けば、住民からも、識者からも、監査委員は悪行をなす各執行機関の防壁にすぎないとの不信感を助長しかねません」(田中孝男『住民監査請求制度がよくわかる本』公人の友社、53頁)と指摘されるのも当然だと思います。

今回私が提起した住民監査請求は、事実証明(証拠)も十分ですし、「不当な公金の支出」にあたると私は考えています。故に「市に損害を与えたので、担当者と責任者は不当な支出である10万円を市に返還せよ」という「勧告」が出されると思いますが、もしも「却下」となった場合、監査委員がどんな理由をつけるかは要注目です。

🔶今でも残る H.O さんのブログの最後の投稿
市民がひとりでも出来る市政監視、とりわけ「住民監査請求」にかかわる際に必ず思い出すのは、故 H.O さんのブログです。
ブログのタイトルは「まちウォッチング」で、「上尾の街をウォッチング その心は、気持よく住み続けられる街になってほしいこと
」のサブタイトルがつけられていました。

今も web 上に残る H.O さんの最後の投稿(2020.05.23)は、私が2年前に提起した住民監査請求(上尾市職員措置請求)について、口頭陳述の翌日にご自身の感想が述べられています。その部分を引用してみます。

H.O さんのブログ「まちウォッチング」最後の投稿より(2020.05.23)
…本ブログの管理者も傍聴に参加したいと思っていたのですが、前週末から体調を崩して熱が出てしまい、医師の指導に従って、薬剤による自宅での治療と養生中のため、かなり回復はしてきていますが、外出は控えるべきと考え、傍聴は見送りました。

しかし、この監査請求は、請求する金額は少額とは言え、今後の公用車の使用を最小限にとどめることにつながる効果が期待される大きな問題と考えています。
新型コロナウイルス感染拡大を防止するための緊急事態宣言の下、市民の生活が経済的にも破壊され、市の財政にも甚大な出費が長く続くことが予想されている最中でありますから、税金の使い方を改めることを求める重要な機会として、多くの市民のみなさまに関心を高めていただくことを願っている次第です。

私は、ひとりの市民として、この投稿にある H.O さんの思いをよりどころにして、「ひとりでもできる市政監視」を続けていきたいと考えています。