上尾市図書館へ2つの「意見書」を提出しました。
多くの課題を抱える一方で、利用者や市民から「図書館はこうあってほしい」との期待もある上尾市図書館。「第3次上尾市図書館サービス計画」と「第3次上尾市子どもの読書活動推進計画」それぞれの案についての意見の提出期限が2月8日までとなっています。私も「意見書」を提出しました。今記事では、この2つの計画案についてお伝えします。
No.140
🔷「第3次上図書館サービス計画」について
まず、私が図書館に提出した意見書がこちらです ⇒第3次上尾市図書館サービス計画への意見書
※この「意見書」は、7,000字以上あります。お読みになる際は、PC画面を推奨します。ちなみに、今読んでいただいている記事は3000字弱です。以下、提出した意見のポイントについて述べます(サービス計画案には字句や国語的表現の訂正等もありますが、それらを除きます)。
全体を通して | 現在の上尾市図書館の課題は「スタッフの配置と業務の棲み分け」&「施設」に収斂されます。 |
スタッフの配置 | 上尾市図書館には、図書館法4条で謳われている専門的職員である「司書」・「司書補」が配置されていません(そもそも職名自体がありません)。市議会での教育総務部長による「司書は〇〇人」との答弁は「司書有資格者」のことです。 現状は、事務職員である図書館職員が「基幹的業務」と思われる業務をおこなっています。ただし、職員の方の中には、自らの業務をなるべく専門的業務に近づけたいということで、司書資格を取得する方もいることは事実です。 |
業務の棲み分け | 図書館の「基幹的業務」が何であるかは、明確に定まっていません。上尾市図書館でも同様ですが、選書等の業務は市の正規職員が担当しており、カウンター業務等の一部の奉仕(サービス)は「非基幹業務」であるとの判断で、民間企業であるナカバヤシに単年度契約で委託しています。利用者と最も接する機会が多いカウンター業務こそ「基幹的業務」であるとの研究者等の意見もあります。カウンター業務を担当しない職員が、今回のような『サービス計画(案)』を作成し提示することに矛盾は無いのでしょうか。 |
施設 | 「上尾市図書館(とりわけ本館)を何とかしたい」というのは利用者も職員も同じ思いだと思います。後述する『上尾市個別施設管理実施計画』とのすり合わせが必要です。 |
第1章2. 計画の位置づけ | 『①行財政3か年実施計画』『②上尾市個別施設管理実施計画』『③上尾市行政改革大綱・実施計画』については、図書館に係わる部分は説明があったほうがよいと思われます。 とりわけ『②施設計画』では、「本館=移転更新及び拡充。残存建築物は用途転用」との記述がされています。しかも具体的にそうした動きが求められるのは、2021(令和3)年度からとなっています。このことについては、『計画案』においても明示が必要です。 |
第1章3.上尾市図書館の現状と課題 | 「サービスの現状と課題」(1)~(5)について、『図書館法(以下「法」)』および『図書館の設置及び運営上の望ましい基準(以下「基準」)』の何に対応するか示すべきです。「法」や「基準」の全項目に対応させていけば、上尾市図書館におけるサービス計画の課題も浮かび上がってきます。 |
第2章2 基本方針 | 「図書館の基本的機能」という文言がわかりにくいです。 これは、上尾市図書館協議会の「答申」の4つの柱の一つである「収集」の中の「(1)資料や情報の収集等、基本的機能の充実」を参照したと思われます。しかしながら、『基準 活用の手引き』では、「収集方針等は…資料に精通した司書が中心となって作成する」と説明されています。そうした説明を省いた「答申」の記述には首肯することはできません。 |
P12 レファレンスサービス | <方向性>の文章のあとに、「当面、本館に現在設置しているレファレンスのためのコーナーに職員を常置します」を加筆します(委託職員を除きます)。 図書館本館のカウンターの左側に設置されている「レファレンスコーナー」のような机がありますが、いつ見ても誰もいません。図書館職員を常置して、利用者のニーズを把握するべきだと思います。 |
P18 項目を起す | 新たに項目を起こし、次の文章を挿入します。 「上尾市図書館と同様に、「一部奉仕外部委託」運営方式を採用している全国の図書館の実践等を学び、課題解決に取り組みます」 調べたところ、全国の市には、上尾と同じように「一部奉仕外部委託」をしている図書館が、146市(政令市除く)あることがわかりました。そうした図書館での様々な取り組みを学ぶ必要があると思います(特に小山市や丸亀市の実践)。 |
🔶「あげお子ども読書プラン」について
同じ計画案でも、「第3次上尾市図書館サービス計画」に目が行きがちですが、「あげお子ども読書プラン=第3次上尾市子どもの読書活動推進計画」も大切です。私が提出した意見書の概要について、以下にまとめてみました。
表記について | 字句等の表記は、「子どもの読書活動の推進に関する法律」に合わせたほうが良いと思います。 |
P1. | 「子供の読書活動は…」 ⇒ 「子どもの読書活動は…」 『計画案』全体を通じて、「子ども」に統一します。 |
P1 下から3行目 | 「〇〇〇〇〇…」が目指す「読み聞かせのまち あげお」について、〇〇に入るべき言葉(文章)が不明確です。 |
P8 および P10 (学校の実態) |
P8で2020年度までの「実施状況」、P10で「課題」が述べられていますが、事実関係をもう少し正確に把握し、課題として挙げたほうがよいと考えます。すなわち、P8には、 〇司書教諭、学校図書館支援員が中心となり、計画的な図書資料の整備・更新・充実、学校図書館のスペース拡張の検討、書架の購入 <教育総務課> 計画的な図書の購入等 各校の工夫による書架の並び替えや配架の変更(学校) 計画的に書架整備を図った と記述されています。 残念ながら、各学校の実態としては、たとえば中学校の数学の教師が「教員採用試験に有利になると思い、たまたま大学の時に講習を受け、司書教諭になった」ので、他に誰もいないので司書教諭になった(させられた)ケースもあります。また、司書教諭の資格を持ちながら公にしない「隠れ司書教諭」が存在するのも事実です。それは何よりも「ただでさえ忙しいのに、司書教諭になると、さらに校務が増えてしまうので、司書教諭にはなりたくない(しかもノーギャラ)」というのが本音だからです。必置職員であるにもかかわらず、学校現場ではこのような状況であることを認識すべきであり、「実施状況」としては、必ずしもプラス面だけではないことを課題として文章化すべきであると考えます。 また、書架については大変高価であることから、学校配当の備品購入費では購入が困難であり、学校によってはシルバー人材の用務員さんの手を借りたり、器用な教職員が手作りするケースもあります。つまり、「書架の購入」と簡単に記述できない実態があることを認識すべきであることから、課題として「図書用備品購入費の増額」などの文言が必要だと考えます。 |
◎以上の2つの計画案について、ひと言でも良いので、ご自分の意見を提出することをおすすめします。
なお、2月22日(月)午後1時30分から、上尾市図書館協議会が開催される予定です。議題としては、上記2つの『計画案』に対しての「市民コメントの結果について」ということです(詳しくは図書館のHPを参照してください)。
図書館の2階で本の貸し出しをしてくれる人(女性)は、上尾市に雇われているのではないのですか?
コメント(ご質問)、ありがとうございます。
図書館ユーザーさんのご質問のとおりです。現在、上尾市図書館のカウンターで資料(本やDVDなど)の貸出や返却などの業務を担当しているスタッフは、(株)ナカバヤシが雇った方たちです。
こうした雇用形態を含めた業務委託のやり方(私は、「一部奉仕外部委託」運営方式と呼んでいます)では、「指揮命令系統」が問題となります。
すなわち、上尾市図書館の職員(市の採用)は、カウンター業務のスタッフに直接仕事の指示が出せません(仕事の指示を出すと、「偽装請負」の問題になってしまいます)。
それを避けるために、ナカバヤシ側には総括責任者がいて、その人と打ち合わせることになっています。