日々の所感 : 表参道界隈の美術館のこと
ブログ筆者は、以前受けた手術の経過観察のため、年に2回、東京・表参道にある病院に通っています。コロナ禍前は、病院に行ったついでに、表参道付近にある様々な美術館を訪れました。この界隈にはアートスポットが点在していますが、その中には、残念ながら現在は閉館してしまった美術館もあります。
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■表参道の界隈には個性的な美術館が
地下鉄表参道の駅の近くには、様々なジャンルの美術館があります。まず、太田記念美術館。ここは原宿駅から至近距離にありますが、表参道のメイン通りから一歩入るためか、美術館の周囲は意外なほど静かです。建物自体はそれほど大きくありませんが、浮世絵専門と言える美術館です。
コロナ禍で企画展のスケジュールが大幅に変更になったようですが、11/14からは「ニッポンの浮世絵」と題した企画展を行うようです。
続いて、表参道から歩いて10分ちょっとの根津美術館。ここの建物の特色のひとつは、美術館入口に続く、竹をふんだんに使った通路。「これから美術館に入るんだな」という少し高揚した気持ちにさせてくれます(維持管理をするのが大変そうですが)。建物の設計者は、「あの」新国立競技場を手がけた隈研吾氏です。
来月の14日から「根津美術館の国宝・重要文化財」と銘打った企画展が開催されます(日時指定予約制)。尾形光琳《燕子花図屏風》や、以前当ブログでも触れた鈴木其一《夏秋渓流図屏風》も展示される予定なので、日本美術が好きな方には魅力的でしょう。広い庭の散策をすれば、ここが都会だということを忘れさせてくれます。
根津美術館を出て南に行き、岡本太郎の元のアトリエを改装した岡本太郎記念館(ここも楽しいアートスポットです)を通り過ぎ、広い通りに出たら左に行くと、紅ミュージアムがあります。HPでは「紅ミュージアムは、紅と紅屋の歴史、そして日本の化粧史を常設でご紹介する伊勢半グループの企業資料館」と紹介されています。文字通り「紅」に関する展示と、関連商品を販売しているユニークな施設です。ブログ筆者はここで「べにばな茶」を購入したことがありますが、冷やして飲むと、とても美味しいお茶です。
表参道界隈には、この他にも「2020年に開館30周年を迎える、現代アートの私立美術館」であるワタリウム美術館があります。今は「1時間に20名限定」という入場者制限を設けています。ブログ筆者は、ここでナム・ジュン・パイクや李 禹煥(リ・ウファン)の作品を見た記憶があります。
HPには「1990年の開館以来、東京からアートをと、この場所で様々な作品が生み出されてきました」とあります。ともすれば「現代アートはよくわからない」と言われますが、近くに行った際に立ち寄る価値はある美術館だと思います。
■閉館した美術館のこと
一方で、表参道の周辺には、残念ながら閉館してしまった美術館もあります。そのひとつが「アニヴェルセルギャラリー」です。現在はアニヴェルセル表参道というブライダルのお店になっていますが、以前は建物の地階がマルク・シャガールの美術館でした。とりわけ、《誕生日》という作品が常設展示されていて、ブログ筆者は表参道に行く際には、ここに寄るようにしていました。
シャガールほど、作品に自らの感情がそのまま表出する作家はいないのではないでしょうか。シャガールの気持ちが暗くなると、画面からそれが伝わってきますし、明るい気持ちになると、描かれている人物は空を飛んで恋人のもとに行くという自由さがあります。
残念ながら、このシャガール専門美術館はしばらく前に閉館してしまいました。今から思えば、訪れた際、来館者はほとんどおらず、貸切状態の時も何度かありました。おそらく採算が合わなかったのでしょうが、残念でなりません。
同じように閉館した美術館に、ユニマット美術館があります。表参道の隣の駅、外苑前から至近距離にあり、所蔵作品はいわゆるエコール・ド・パリの作品が中心でした。Foujita(藤田嗣治),モジリアニ,シャガール,あるいはキスリングやモンドリアンなど、ブログ筆者の好みの作品が多数展示されているので、何度か訪れた覚えがあります。
私設の美術館は、維持をしていくのが大変なことだろうと想像はつきますが、「あそこに行けばあの絵に会える」という思いがあるだけに、美術館閉館の報に接すると、何とも言えない気持ちになります。
最近では、品川の原美術館が今年いっぱいで閉館するということを知りました。ただ、HPによると、「2021年から、群馬・渋川のハラ ミュージアム アークの館名を原美術館 ARC(アーク)と改め、引き続き活動していくことにいたしました」とあるので、少し安心しました。
できれば来年行ってみたいと思っています。