上尾3月議会「議案第12号」から見えてくる様々な「不可解なこと」

上尾市議会での一般質問が始まり、私は関心のある質問をwebで視聴しています。
同時に、現在市議会に提出されている議案に関心を寄せていますが、中でも
「議案第12号」から、様々な「不可解なこと」が見えてきました。
今記事では、このことについてお伝えします。

No.211

🔶条例提出に至る経緯はいまだに非公開のまま
上尾市議会3月議会の「議案第12号」とは、「上尾市不登校対策推進委員会条例の制定について」というものです。
これは総務課の「3月議会 議案一覧」の中に入っています。

この条例案は、2月8日の臨時教育委員会で非公開案件(つまり、傍聴できない)として可決されたもので、3月議会にかけられています。しかしながら、2月の臨時教育委員会の会議録については、1か月以上経過している現在も、公開されていません。
通常、教育委員会の会議録は、次の委員会の冒頭で確認されています。
そうであれば、2月22日の定例会において会議録の確認がされるべきです。しかも、今まで会議録に異を唱えた教育委員は皆無なのですから。

今回の「議案12号」については、どのような経緯でこの条例が提出されるに至ったのか、事務局のどこの課が提出し、教育委員は何とコメントしたのかについて、市民には全く知らされていないのです。

🔶上尾市不登校対策推進委員会条例の概要
では、この条例の概要を見てみましょう(強調のための太字・色替えあり)。

上尾市不登校対策推進委員会条例(概要) (2022.04.01施行予定)
(提案理由) 不登校児童生徒に対する対策を総合的かつ効果的に推進するため、教育委員会の附属機関として上尾市不登校対策推進委員会(以下、委員会)を設置したいので、この案を提出する。
第2条 この条例において「不登校児童生徒」とは、学校における集団の生活に関する心理的な負担その他の事由のために就学が困難であるとして、相当の期間学校を欠席する児童又は生徒をいう。
第3条 委員会は、上尾市教育委員会の諮問に応じ、次に掲げる事項について調査検討する。 
(1)上尾市不登校対策基本方針(本市における不登校児童生徒に対する対策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針をいう。)の策定及び推進管理に関すること。
※(2)~(5)は略
第4条 委員会は、委員10人以内をもって組織する。
2 委員は、次に掲げる者のうちから、教育委員会が委嘱し、又は任命する。
(1)学識経験を有する者
(2)上尾市立小学校及び中学校の校長を代表する者
(3)不登校児童生徒に対する対策に携わっている担当教諭を代表する者
(4)相談員として不登校児童生徒又はその保護者から相談を受けた経験のある者
(5)上尾市立小学校及び中学校の保護者を代表する者
(6)前各号に掲げる者のほか、教育委員会が必要と認める者
第8条 委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係者に対して、資料の提出を求め、又は会議への出席を求めてその意見若しくは説明を聴くことができる。
第9条 委員は職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。
その職を退いた後も同様とする。 
【附則】
2 上尾市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例の一部を次のように改正する。第1条の2第19号を次のように改める。
19 不登校対策推進委員会
委員長 日額 11,000円
委員  日額 10,000円

🔶条例のここが「不可解」
ざっと目を通しただけで「ツッコミどころ満載」ですが、整理してみましょう。

① 「(不登校対策を)総合的かつ効果的に推進」って何?
不登校児童生徒に対する対策を総合的かつ効果的に推進するために上尾市不登校対策推進委員会を設置したい、とあります。
しかしながら、現状についての分析や説明はこの条例では全く示されていません。それでもこの委員会を設置するということは、現状がうまくいっていないので、外部機関を設置し、丸投げするとも読み取れます。
教育センターは何のためにあるのか、非常に疑問です。

②  「不登校児童生徒」の定義が極めて曖昧。
学校における集団の生活に関する心理的な負担その他の事由のために就学が困難」とは、どういうことなのでしょうか。コロナ感染が心配で学校に行かない児童生徒は「その他の事由」に含まれるのでしょうか。
また、「相当の期間」とはどのくらいの期間をいうのでしょうか。

③ ちぐはぐな対応
この議案では、「尾市不登校対策基本方針の策定及び推進管理」のために委員会を設置とありますが、同じ「基本方針」でありながら、
上尾市教育委員会は、「上尾市立小・中学校における働き方改革基本方針」については、教育委員会の会議に一度も提起せずに、事務局だけで決めてしまいました。片や「上尾市不登校対策推進委員会」に丸投げ、片や事務局だけで決定するという、極めてちぐはぐな対応であり、不可解というしかありません。

④ 個人情報の扱いと守秘義務への疑念
関係者に対して、資料の提出を求め(ることができる)」とありますが、「関係者」とはいったい誰を指すのでしょうか。
さらに、秘密に属する「個人情報」を、委員会で共有してよいのでしょうか。
委員の中には、保護者の代表も入っています。たとえ守秘義務条項(第9条)を設けたとしても、違反した場合は、どの法律に抵触するのかや、罰則規定がどうなっているのかは全く不明です。

🔶「文教経済常任委員会」での議論から
この「議案12号」に関しては、3月7日の「文教経済常任委員会」で質疑答弁が交わされ、採決がおこなわれています。
結果的にこの議案は「賛成」となったものの、委員からは条例の不備への指摘や疑問点が数々出されました。

Q.  そもそも、何をするための委員会なのか? 
A.  不登校については、複雑化・多様化しているので、「指針」を示したい。
Q.  推進委員は10名となっているが、その内訳は?  
A.  次のように予定している(計8名)
1)学識経験を有する者 → 2名(心理学・福祉関係の大学教授)
(2)上尾市立小学校及び中学校の校長を代表する者
→ 2名(小・中各1名。ただし不登校の専門家であるかは不明)
(3)不登校児童生徒に対する対策に携わっている担当教諭を代表する者
→ 1名(教育相談主任)
(4)相談員として不登校児童生徒又はその保護者から相談を受けた経験のある者
→ 2名(さわやか相談員・教育センターの相談員各1名)
(5)上尾市立小学校及び中学校の保護者を代表する者 → 1名(市P連の推薦)
(6)前各号に掲げる者のほか、教育委員会が必要と認める者 → 不明
Q. 年間何回予定してるのか。 具体的なケースの検討はするのか。
A.  令和4・5年度=7月・10月・2月  ∴3回×2年=計6回予定している。
具体的なケースの検討はしない。基本方針を出すだけである。

原案に対して、文教経済常任委員からは多くの意見が出されました。
その中で、鈴木茂委員の意見(概要)は次のとおりでした。

こういうもの(対策推進委員会)を作ると、形式的に終わってしまう。(委員が)学校サイドの人たちだけになると、自分たちで良しとするものになってしまう。不登校で苦しんでいる親とか、それを身近で支援している人たちの意見を入れないと、本当の計画にならない。
委員は10人以内となっているので、あと2名の枠がある。不登校を経験した親や、支援している人たちを委員に入れるべきではないか。 → 今後検討していくべきと思う(学校教育部長)

🔶推進委員の報酬から見えてくる「不可解」
この条例の附則では、「上尾市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例」(以下、「報酬条例」)の一部を改める、とあります。

「報酬条例」第1条の2第19号とは、現行では「多文化共生推進計画策定委員会委員」となっていますが、この委員会の会議録を見ると、2022年1月25日が最終の委員会だったようです。つまり、たまたま終わった委員会があったので、「不登校対策推進委員」の報酬額を入れたというのが実態です。

関連して、令和4年度予算(p.135)の「教育センター運営費」には、次のように示されています。(単位 千円)

「不登校対策推進委員会委員報酬」は、3人分で 90,000円が予算計上されています
このことから、「特別職の職員で非常勤のもの」=「委員」は3名であり、年度に3回の会議が予定されていることがわかります。原案では「現役の公務員以外の委員が3名である」ことになります。まだ発足していない委員会なのに、特別職の非常勤のものが3名という前提で予算計上したということでしょうか。これも不可解なことのひとつです。
ただし、上述の文教経済常任委員会のやり取りから、不登校の当事者の親、あるいはその支援をしている人が委員として加わる可能性も残されています。

来年度、6月くらいまでの教育委員会定例会で、これらの推進委員については氏名も明らかになると思われますので、注意して見ていきたいと思います。

🔶派生する問題点-「報酬条例」の不可解
上述の「上尾市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例は、よく見ると、様々な疑問が生じてきます。

まず、「特別職の職員で非常勤のもの」が58種類(枝番を入れると85種類)もあることに驚きます。それぞれの報酬額は、上記条例左欄にある「別表」をクリックすると見ることができます。
報酬額は日額・月額・年額があり、日額は 4,800円~16,000円 まで決められていますが、その基準がどうなっているのかは、この表だけではわかりません。

不可解なのは、別表13の4「上平地区複合施設検討委員会」です。
(委員長日額16,000円・委員日額15,000円)
これについては、「令和2年度予算」には10人分として 604,000円が計上されていましたが、「令和3年度」「令和4年度」各予算には計上されていません。
それなのになぜ上平地区複合施設検討委員会の名前が残っているのかがわかりません。

これは、明らかに畠山市長の「令和4年3月定例会施政方針・上平地区複合施設の事業方針について」との整合性から考えても、まさに不可解であると言えます。

◎今記事では、市議会3月議会の「議案第12号」から見えてきた様々なことをお伝えしてきました。記事の中で何度か「不可解」というキーワードを使いましたが、これがまさに今の上尾市政・教育行政を端的に言い表わしていると私は考えます。

他にも不可解なことは様々あります。
今後もひとつひとつ記事にしていくつもりですので、よろしくお願いします(情報提供や内部通報など大歓迎です。「お問い合わせ」経由でご連絡ください。必ず返信いたします)。

“上尾3月議会「議案第12号」から見えてくる様々な「不可解なこと」” への2件の返信

  1. 小学生の頃、いじめとはでなく、ただめんどくさいという理由で、学校をさぼるクラスメイトを学級委員が「学校いこうよ」と自宅まで行って、連れて行くということがありあした。そのような地道な取組みを不登校対策委員会でも考えていただきたい。
    また、いじめで不登校になるまで至ったった子供を、見逃した場合、登校させることは無理だと思います。市が専門家を雇って検討しても。自分が親ならその学校に通学はさせません。

    1. 学校が忙しすぎて、教員がじっくりと児童生徒の話を聞いてあげる余裕が無いことが、不登校の要因となっている場合もあります。
      何かというと協議会や委員会を立ち上げ、その人選は「教育委員会事務局に異を唱えない人」が条件になっているような気がします。
      注意していないと、何をやらかすかわからないのが今の上尾市教育委員会と事務局です。

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