上尾市会議員として最後の一般質問も舌鋒鋭く中身の濃いものでした。

市議選直後の上尾市議会12月定例会が終わりました。
今回で退任する議員は、議席順に、小川明仁・戸口佐一・渡辺綱一・鈴木茂・池田達生・長沢純・道下文男の各議員です。このうち、小川・長沢両議員を除き、5名が12月定例会の一般質問に登壇しました。
今記事では、その中から2名(鈴木茂議員と池田達生議員)による一般質問の様子をお伝えします。

No.304

🔸鈴木茂議員の一般質問から
まず、12月15日におこなわれた鈴木茂議員の一般質問から、当ブログが以前から強く関心を寄せている問題についての質問を見ていきます。
[委嘱研究の強制について]
市教委事務局の指導課が市内の各小中学校に強制している「研究委嘱」。
その弊害については、当ブログでも以前から指摘をしてきましたが、市議会でも何度か取り上げられてきました。以下、12月定例会での鈴木茂議員の質問と学校教育部長の答弁からピックアップします。

Q(鈴木茂議員):(研究委嘱発表の学校訪問で)教職員が作成する資料の簡素化とは何か。
A(学校教育部長):指導案を簡略化し、電子化した。
Q:電子化により、業務は何時間削減出来たのか。
A:市内全体で概算1700時間程度である。
Q:3年に2年の研究委嘱は業務の多忙化を招いているという指摘がある。
  研究委嘱について文科省や県のほうで決まり(法律や規則等)はあるのか。
  無いのであれば、5年に1度などにすれば教員の負担は減るのではないか。
A:研究委嘱については、国や県で定められている法令や規則は無い
  上尾市の「魅力ある学校づくり事業」により実施している。
Q:(資料提示)小学校では(10月の時間外が )24,345時間
中学校では18,492時間となっている。1700時間削減くらいでは追いつかない。
A:少しずつではあるが成果はあげている。

[私が入手した資料が一般質問で活用されました]
鈴木茂議員の質問では、「上尾市内教職員の11月分時間外在校等時間一覧」が活用されました。この資料(下記)は、私(当ブログ館主)が情報公開請求で入手し、見やすいように整理したうえで提供したものです。

    小学校:(2023年10月の時間外勤務)    中学校:(2023年10月の時間外勤務)

この資料は10月分の時間外勤務ですが、鈴木議員が指摘しているように、トータルでは大変な時間数となっています(以前お伝えした6月分も一緒に示します)。

小学校 10月計 24,345時間  6月計 27,451時間
中学校 10月計 18,492時間  6月計 20,183時間

この時間外勤務時間数を減じるには、抜本的な対策が必要です。その場合、基本となるのは、「出勤・退勤時刻が守れる業務量とし、休憩時間を保証する」ことに尽きます。
基本的には、職員の出勤時刻前には児童生徒は登校しない・退勤時刻の前に下校する ことが大前提となります。

また、いくら学校教育部長が「少しずつ成果をあげている」と強弁しても、市教委指導課が中心になって強行している「研究委嘱」の弊害はあります。
情報公開請求を通じて私の得ている感触では、「指導主事になったからには、学校に行って教員を指導したい」という思いが強すぎるのではないでしょうか。中学校勤務の経験の無い「指導主事」が、中学校のベテランの先生に対して「指導」することの適否について、当の「指導主事」である職員はどう考えているのか、聞いてみたいところです。

[平方小の時間外勤務の状況について]
資料の中で、鈴木茂議員が指摘したのは、平方小の時間外在校時間が極めて少ない状況についてです。
学校教育部長からは「(時間外在勤時間が少ないのは)週に1日早く帰る日を設けている」「校長が声をかけている」などの説明がありました。そうした取り組みが奏功しているのなら良いのですが、元データを見ると、[44時間58分]や[44時間56分]という職員が複数いるなど、45時間を超えないように調整したのではないかと思わせる数字も見受けられます。
退勤の打刻をした後、学校に残って残業をしている、あるいは持ち帰り残業などのケースも想定されることから、数字の信憑性も問われます。

以上のとおり、今回も私の作成した資料が示され、活用されました。鈴木茂議員の舌鋒鋭い質問のおかげで、今後の課題も見えてきたと考えています。

🔸池田達生議員の一般質問から
池田議員も私が入手した資料に基づき、何度か市議会で質問していただきました。
それだけに、今回の選挙で次々点となり当選に至らなかったのは残念です。
12月19日の池田議員の一般質問項目「学校再編計画は、児童・生徒、保護者、地域の声を聞いて」での池田議員の発言は至極当然の主張であり、納得できるものです。

[学校再編計画について]
以下は、上尾市教育委員会がすすめようとしている「学校再編計画」に関しての池田議員の質問と教育総務部長の答弁です。

Q(池田達生議員):「学校再編」の今後の日程は。
A(教育総務部長):「学校施設更新計画基本計画」に基づき、今年度末までに「実施計画」を策定し、令和6年度以降は「実施計画」に則り、更新計画の更新や学校再編の協議をすすめていく。
Q:9月に策定した学校再編の骨子案では、「学校編成の対象校には協議会を設置し、保護者や地域住民との対話を通じて通学区域の調整や近隣校との統合など、地域の実情を踏まえた規模の適正化を図る最適な手法を検討」と記載されている。どのように保護者や地域住民と対話をしていくのか。その中で子どもの意見をどのように聞いていくのか
A:学校再編検討対象校には、学校関係者や保護者、地域住民等による協議会を設置する予定としている。また学校再編の検討にあたっては、児童生徒の意見もしっかりと聴取していきたい
Q:6月におこなった質問に対して、部長は3つの対象校(平方北小・大石南中・尾山台小)においてアンケートを取ると答弁している。アンケートの目的と進捗状況は?
A:学校再編検討校の現状や課題を把握するために、平方北小・尾山台小・大石南中の未就学児童保護者を含む保護者や児童・生徒に対して8月から9月にかけてアンケートを実施した。現在とりまとめているところである。

 [池田質問に関する資料 - 教育委員会12月定例会にて配布]
教育委員会12月定例会については、私も傍聴しました。定例会の席上、「第1期 令和5~令和9年度 上尾市学校施設更新計画 実施計画(素案)」が配布されました。
この中で、市議会一般質問で学校名が示された3校については次のようになっています。



注目すべきは、「期中の取組み概要」の欄が、上記3校ともに《再編》と記載されている点です。他の学校については、この欄は《保全(維持保全)》となっています。
また、「再編の協議」の開始時期を見ると、
平方北小 ⇒ 2024(R6)から再編の協議
尾山台小 ⇒ 2027(R9)から再編の協議
大石南中 ⇒ 2026(R8)から再編の協議  と記載されています。
(他校の実施工程表は、こちら(実施計画)をごらんください)

[池田議員が警鐘を鳴らしていた問題 ー 小中一貫教育への危惧]
池田議員は、以前から上尾市教育委員会が「小中一貫教育」に遮二無二突き進んでいくことに警鐘を鳴らしていました。その理由は、
*保護者アンケートを見ても、教育施策としての優先度が極めて低いこと。
*県教委の資料も約10年前のものであり、県として力を入れていないこと。
*現在の「小中連携」で十分であり、学校現場の多忙化に拍車をかけること。

当ブログは池田議員の指摘に加え、小中一貫教育は、結局のところ「指導主事の、指導主事による、指導主事のためのもの」であることを、今後、実証的に深掘りしていきます。

🔸新しい感性と「気づき」に期待します
今記事で紹介したお二人の市議会での一般質問は今回で最後になるかもしれませんが、市議選では新しい議員が選ばれていることもあり、その意味では新しい感性と「気づき」に期待しています。
当ブログは、「市民的視座から市政・教育行政を考えよう」がコンセプトです。
必要があれば、情報公開請求を通じて入手した資料等を新しい議員さんにも情報提供していくつもりですので、よろしくお願いします。