市民による情報公開請求と「問い合わせ」で市教委指導課が慌てて対応

現在、教員の働き方改革に関連して「部活動の地域移行」が注目されています。
上尾市においても、「上尾市立中学校部活動地域移行推進協議会」が5月と10月に開催されました。5月の同協議会を私(当ブログ館主)は傍聴しました(傍聴者は私だけでした)が、配布された資料は当日のうちに回収されてしまい、会議録についても市教委HPになかなか掲載されない状態が続いていました。
そのため、私は同会議録の開示を求めて情報公開請求したところ、「半年近くもほおっておかれた会議録」が突如として市教委HPに掲載されたのです。
ですが、市教委事務局はよほど慌てたのでしょう。HPに掲載されたのは会議録のみで、協議会の席上配布されたはずの資料が公開されていませんでした。
そこで私は指導課にHP経由での「問い合わせ」をしました。
はたしてその結果はー?

今記事では、「部活動の地域移行」をめぐる、何とも不可解な市教委指導課の対応についてお伝えします。

No.302

🔸教育委員を無視して決めた「部活動方針」
部活動の地域移行」を考える際の基本となる「上尾市立中学校に係る部活動方針」。
ところが、この「部活動方針」は[平成30年12月制定・令和5年3月改定]とされていますが、制定・改定時ともに教育委員会定例会の議題となっていません。したがって教育委員には知らされていないです(詳しくは当ブログNo.281記事No.274記事参照)。

市教委事務局が作成した「方針」を教育委員会定例会にかけないこと自体、「上尾市教育委員会は教育長と5人の委員により組織され、教育、学術および文化に関する事項について大所高所からその基本的な方針などを決定します」という「教育委員会のあらまし(市教委HPに掲載)」の説明とは違っています(=市教委は信用できないという証の一つ)。

この「部活動方針」の冒頭では、以下のように書かれています。

わずか3行の文ですが、現在の学校が抱えている問題や「部活動方針」の矛盾点が露呈しているとも言えます。文言を整理してみましょう。

「学校の部活動は」⇒
① 生徒が自主的・自発的に参加している。
② 部活動顧問の指導の下、学校教育の一環としておこなわれている。
教師の献身的な支えによって、上尾市のスポーツ・文化芸術振興を担ってきた。

つまり、部活動は「学校教育の一環」であるにもかかわらず、「教師の献身的な支え」によって成り立っているということを教育委員会自らが認めていることになります。
勤務時間外におこなわれる部活動の時間は、「教師の献身的な支え教師のただ働き」ということになります。

以上から明らかになったことは、「部活動の地域移行」を考える際の基本となる「上尾市立中学校に係る部活動方針」とは、「教師のただ働き」を前提としており、しかも、教育委員には示されることなく策定されたものである、ということです。

🔸上尾市立中学校部活動地域移行推進協議会のメンバー
部活動地域移行推進協議会の委員は、今年度4月の定例会議案となっています。
ただし、どういう目的で委員を選ぶのかについては示されていません。
メンバーは次のとおりです。

このメンバー、私には「部活をやりたがる人や、元アスリートを集めた」と思えます。
また、「いろいろな協議会の委員に名前を出しているが欠席が目立つ」市P連の会長さんも含まれています。

部活動について考えるメンバーの中に、1号委員(or 6号委員)に、『部活動の社会学』『学校の部活動と働き方改革』の編(著)者の内田良 氏のような教育社会学者を入れる考えはなかったのでしょうか。

部活動の社会学』では、次の観点から部活動のあり方が論じられています。

部活動はどう変わってきたのか
~学習指導要領上の位置づけを中心に~
部活動問題はどのように語られてきたのか
~「子供のため」の部活動という論理~
なぜ部活動に熱中するのか
~年代別多忙化メカニズムの検討~
教員のジェンダー・家族構成は部活動にどのような影響を与えるのか
経験者割合は部活動にどのように影響しているか
~生徒の小学生時代のスポーツ経験に着目して~
勝利至上主義にはどのような特徴があるのか
地域によって部活動は変わるのか
部活動は安全か
~熱中症事案が映し出す「制度設計なき教育活動」の重大リスク~

こうした観点からの、言わば「学術的な論議」を現在の上尾市教育委員会に期待するのは無理なのでしょうか。

🔸見つけにくい「部活動地域移行推進協議会」資料
実は「上尾市立中学校部活動地域移行推進協議会」の会議録や資料は、上尾市のHPの中で非常に見つけにくい(たどり着くのに難しい)のです。
市のトップページ「上尾市の基本情報」の中の「情報公開・会議の公開」には掲載されていません。たどり着くためには、次のように進んでいく必要があります。

教育委員会 → 教育委員会の組織/学校教育部 → 指導課 → 新着情報【会議の開催結果】2023年11月13日更新(第1回)・11月29日更新(第2回)

🔸情報公開請求と担当課への「お問い合わせ」の結果は
上述の「上尾市立中学校部活動地域移行推進協議会」の会議録が公開された経緯ですが、私が会議録について情報公開請求した結果、指導課はHPの指導課のページに第1回の推進協議会の会議録を掲載しました。また、紙で私に手交された第2回の会議録もHPに掲載しました。
ところが、あわてて掲載したからか、協議会の席上で配布された資料の公開は忘れていたようです。そこで、指導課のページから「お問い合わせ」をしました。


私の「お問い合わせ」への回答は次のとおりです。

こうして、やっと公開された資料の中には、「上尾市における地域クラブ活動実施に係る基本方針(素案)」も含まれていたことが判明しました。
これについても、10月・11月の教育委員会定例会の議題になっていません
すなわち、「部活動の方針」だけでなく、「部活動地域移行」についても教育委員には途中経過も含めて示されることは無いというのが現状なのです。

🔸教育委員会事務局の最低限の責務は
今記事では、市教委事務局(指導課)が、部活動の地域移行に関する会議録や資料について半年近くも公開しなかったこと、しかも市民からの情報公開請求や「問い合わせ」によってあわてて対応したことなど、市教委事務局の不可解な対応についてお伝えしました。

教育委員会(事務局)の最低限の責務として、次のことがあります。
*たとえ教育委員が毎回「全員一致・異議無し」で賛成するにしても、基本的な方針案は、例月の教育委員会定例会の議題とすること。
*「推進協議会」などの開催の際は、会議録と関連資料を速やかに公開すること。
*公開された資料により、市民がその問題について検証できるようにすること。

◎当ブログは、市教委事務局の責務が果たされているか否か、引き続き注目していきます。また、今記事では、公開された会議録や資料等の中身については言及しませんでしたが、次回以降の記事の中で注目点をお伝えしていきます。