「中学校給食は安心・安全・安定的な実績がある」と断言した上尾市。ですが…

【追記①】  NHK 首都圏NEWS  WEBにて報道(2021.02.25)

給食で700人余食中毒 上尾
県の保健所が調べたところ、症状を訴えているのは、市内の5つの中学校の生徒700人と教員18人の、合わせて718人に上りました。
県によりますと、症状を訴えた生徒などから食中毒の原因となるウエルシュ菌が検出され、症状が出た状況から今月17日に出された給食が原因の集団食中毒と断定しました。
生徒などの中に入院した人はおらず、全員快方に向かっているということです。
5つの中学校では、上尾市内にある給食の共同調理場と、各学校にある給食室で調理したメニューを出していて、この日は、広東めんと手作りシューマイ、それにスイートポテトと牛乳だったということです。

【追記②】
上尾市教育委員会でも発信 ⇒    それがこちら(市教委HP)
以下、教委HPより転記

中学校 発症者数(実数) うち教職員の発症者数
A 中学校 260人 4人
B 中学校 201人 4人
C 中学校 68人 4人
D 中学校 126人 5人
E 中学校 63人  1人

【追記前の記事はここから】
上尾市の中学校で300名体調不良。学校給食が原因?」という報道がされました。すぐに思い出されたのは、先週2月16日に開催された「上尾市行政改革推進委員会」での上尾市の発言です。
今記事では、このことについてお伝えします。

記事No.144

🔷メディアで報道された内容とは
ヤフーで伝えられたのは、埼玉新聞の報道です。これが見にくい方のためにまとめると、以下のような内容となっています。

①上尾市の中学校2校で生徒ら約300人が体調不良を訴え、上尾市は22日、給食の中止を2月26日まで延長すると発表した。
②上尾市教育委員会の学校保健課によると、市内の2校で18日、腹痛や下痢、発熱などで約60人が欠席や早退、これまでに約300人が体調不良を訴えた。いずれも軽症で重篤者や入院した人はいない。現在鴻巣保健所がウイルス感染や食中毒などを視野に入れ調査を急いでいる。
③上尾市は給食が原因の可能性もあることから、19日と22日の給食を中止していた。同課(学校保健課)では「健康被害が広がらないよう、しっかり原因を究明し、適切な対応をしていく」としている。
④上尾市の中学校の給食は、センターで主食などを調理し、スープや副菜など温かいメニューは自校で作る方式を取っている。中学11校のうち体調不良者が出たのは2校だった。

この中の④については、上尾市の中学校給食は「セントラル&サテライト」方式と呼ばれ、上尾市の言わば「売り」でもあります。
しかしながら、民間企業に業務委託しているため、中学校の教職員にしてみれば、各学校の給食室は「不可侵エリア」となっており(衛生面での配慮もありますが)、どんな方たちが働いているのか、施設・設備はどうなっているのかについては、全くわからない状況となっています。

🔷学校保健課は何と言っているのか
今回の件で、学校保健課は「上尾市のHP」で次のように発信しています。「上尾市立中学校体調不良者に係るその後の状況について」

画面で見にくい方のために、学校保健課の「説明」をまとめてみると、次のようになります

①この度の上尾市立中学校の多数の生徒の皆様に体調不良を発生させてしまったことにつきまして、生徒や保護者の皆様に改めて、深くお詫び申し上げます。 現在、保健所が疫学調査を実施し、食中毒や他の感染症も含め、発症原因や感染経路等を調査中です。教育委員会では、引き続き、生徒の健康観察を丁寧に行うとともに、学校の安全と衛生管理の徹底に努めてまいります。現時点での対応状況等は以下のとおりですので、情報提供させていただきます。
②対応(1)・停止期間:2月19日(金)から2月26日(金)
※当初、22日(月)までの2日間の予定であったが、26日(金)まで延長した。
対応(2)・保健所の立ち入り調査の実施
・当該校(給食室を含む)2校 および中学校給食共同調理場
対応(3)・有症者の生徒および教職員について、検便を実施
対応(4)・中学校給食共同調理場および該当校の給食室(サテライトキッチン)、教室、トイレ等の消毒の実施
有症者数等の推移(学校別)
④その他 ・患者本人や家族の人権尊重・個人情報保護に特段の御理解と御配慮をお願いいたします。

この「説明」は、市のHP(トップページ)「重要なお知らせ」に掲載されています。2月22日に更新されたはずですが、上尾市教育委員会のHPのトップページにある「新着更新情報」には見当たりません。
左欄のメニュー「中学校給食」まで行くと掲載が確認できますが、なぜ「新着更新情報」に記載しないのかは全く不可解です。

また、この説明を読んで、すぐに思い出されたのは、先週2月16日に開催された「上尾市行政改革推進委員会」での上尾市の発言です。

🔷「行政改革推進委員会」での「上尾市の考え」
生徒など300人が体調不良を訴えた日のわずか2日前の2月16日、私は「上尾市行政改革推進委員会」を傍聴しました。
そこでは、市民から出された意見と、それに対する市の考えが議題となっていましたが、市民の意見は、まさに2日後の出来事を予見していると言ってもよいものでした。それはこのような意見(概要)でした。

上尾市行政改革プラン(案)に提出された意見より
意見その1(概要) 小学校・保育所の給食調理業務委託化については、食の安全確保という点から、反対である。委託先での食中毒等の事故が、たびたび報道され、(まとめて委託することにより)被害が広範囲になる可能性や、(事故対応によって)供給が止まり、安定的な供給ができない可能性がある。
意見その2(概要) 子どもたちの育ちを支える一番大事な給食を民間に委託することは、非常に不安であり、市として専門の職員を確保し安心・安全な給食を提供してほしいです。とりわけこの分野での民間活力の活用はやめてください。

 この市民から寄せられた意見は、学校給食の民間委託は、安心・安全という面から反対であるという、とてもわかりやすい主張です。

では、これについて、行革推進委員会で示された「市の考え方」はどんなものであったのでしょうか(原文は朱書きなし)。

上尾市では、安心で安全な保育所給食、小学校給食を提供できるよう運営に努めておりますが、給食調理業務を担う給食調理員の採用などに苦慮しております。現在、中学校給食調理業務を委託化しており、安心で安全な給食を安定的に提供できている実績があります。
保育所・小学校につきましたも民間事業者の専門的な知識、技術を活かし、食の安全確保やアレルギー対応などを前提としたうえで、委託化の可能性を多角的な観点から検討してまいります。なお、給食調理員の募集は市ホームページや市広報への募集記事の掲載、ハローワークへの掲載依頼、公共施設等へのポスター・チラシの設置を行っています。

このように、上尾市は「現在、中学校給食調理業務を委託化しており、安心で安全な給食を安定的に提供できている実績があります」と断言しています。しかし、この2日後、「上尾市の中学校で300名体調不良。学校給食が原因?」との報道がされました。

なお、このときの行革推進委員会では、行政経営課の担当者が「行革についての市民からの意見は5名から10件ありましたが、それを受けての市の行革プランの修正は全くありません」と言い放っていました。
私も教育行政について2件の意見を提出しましたが、それについては別記事で後日お伝えします。

記事の冒頭でお伝えした中学校での体調不良についての原因等は、今後明らかにされると思われますが、「中学校給食は民間に委託していることで安心で安全な給食を安定的に提供している」と断言したにもかかわらず、「供給ができなくなってしまった」上尾市の責任と、これからの対応については注目していきたいと考えています。