教育施設としての上尾市図書館が目指すべきは「市民参加と協働」です
昨年度から今年度にかけての上尾市図書館の取り組みに注目しています。
書評合戦(ビブリオバトル)やワークショップなど、従来は見られなかった企画に、上尾市図書館の「やる気」を感じています。
その一方で、当然ながら課題もあります。今記事では教育施設としての上尾市図書館の「目指すべき方向性=市民参加と協働」について考えたいと思います。
No.282
🔶「図書館関連のあの話はどうなったの?」の「その後」
上尾市図書館の現状と今後を考えるにあたって、「あの話はどうなったのか?」との疑問がいくつかあります。ここでは、次の3つの「その後」についてお伝えします。
①〖上平広場〗の申込担当は?
上平公園西側の「広場」(ゲートボール場として使用)の申込については、長い間上尾市図書館が担当していました。市民からも「なぜ図書館が担当するの?」「上平新施設の関係が尾を引いているのか?」などと疑問の声が出ていましたが、今年度から、みどり公園課が担当しています。
(以前、みどり公園課に質問したところ、「上平広場は広場であって公園ではない」などと言い訳していましたが、やっと本来の形に戻りました。)
②〖上平地区複合施設検討委員会委員〗のその後は?
昨年度まで、「上尾市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例」の中に「上平地区複合施設検討委員会」委員が入っていました。これについては、次のような情報公開請求を提出したところ、2023.03.23以降、条例から削除されました。
「条例」第1条の2の 「(13)の4 上平地区複合施設検討委員会委員」については,市長の発言等からその役割は終了していると考えられます。にもかかわらず,現在もなお「条例」に残っていることについて,市民に対して合理的に説明できる文書・資料等。 |
このことについての情報公開請求は2度おこなっています。時間はかかりましたが、条例から削除されたのは歓迎します。
※こぼれ話になりますが、この情報公開の担当者は、私(当ブログ館主)も参加した書評合戦(ビブリオバトル)の出場者の一人でした。向こうから「ビブリオバトル、出てましたね」と言われ、「奇遇ですね」とお互いに笑い合いました。
③〖図書館協議委員〗の人選、公募委員は?
機会をとらえて「公募の委員を加えてほしい」と言ってきましたが、教育委員会6月定例会で決定した新たな図書館協議委員には「公募委員」は見当たりません。
「第4号委員」として公募委員を加えるべきだと考えています(下記文書は、PCでご覧の方は最下部に拡大機能があります)。
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なお、8月に今年度第1回図書館協議会が開催されます。
私は上尾市図書館問題について関心を寄せ、ブログの記事にしている関係もあるので、毎回傍聴をしています。8月の図書館協議会の様子も後日お伝えします。
🔶「教育施設」である根拠と「ワークショップ」の取り組み
[図書館法=最も基本となる法律]
図書館関連の法律は、一般法である「社会教育法」・「地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地教行法)」・「地方自治法」に対し、特別法である「図書館法」という関係になっています。
図書館法第1条では「この法律は、社会教育法の精神に基き、図書館の設置及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もって国民の教育と文化の発展に寄与することを目的とする」と謳われています。図書館が「教育施設」であるゆえんです。
※市立図書館での資料(本やDVDなど)の貸出に料金がかからないのは、図書館法の定め(第17条 公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない)によります。
[上尾市図書館による「ワークショップ」の取り組み]
上尾市図書館では、7月から9月にかけて、延べ4回の「ワークショップ」を計画しています。私も参加の申込をしました。図書館問題についてブログで発信している以上、図書館の企画にはできるだけ参加すべきであると考えるからです。
「どちらでも可能」に〇をつけたところ、B日程に振り分けられました。
🔶「ワークショップ」の位置づけは?
では、上尾市図書館が実施する「ワークショップ」はどうあるべきでしょうか。
[今までの「ワークショップ」の失敗例]
上尾市は、今までにも他の部署で「ワークショップ」的な取り組みをおこなっていますが、外部(民間会社)への進行の丸投げなど、明らかな「手抜き」が見られました。
たとえば、4年前の「あげお未来創造市民会議」。これは委員の人選も「親上尾市役所」の人たちばかりという完全な「内向き」。資料説明や会議の司会進行も外部(コーエイリサーチ&コンサルティング)に丸投げという、全くひどいものでした(当ブログ記事No.3&記事No.4参照)。
もうひとつは、私も参加した「学校施設更新計画基本計画 ワークショップ」。これも司会進行が教育問題にはズブの素人の㈱地域総合計画研究所がおこなっており、参加者が質問してもろくに答えられない状況でした(当ブログ記事No.243&記事No.244参照)。
なお、確認したところ、今回の上尾市図書館のワークショップは、図書館職員が進行を担当するということで、委託業者に丸投げという事態は無いようです。
[ワークショップの位置づけのあるべき姿]
せっかく市民を集めてワークショップをおこなうのですから、役割を明確にすべきです。
今回のワークショップ実施にあたり、上尾市図書館では次のように目的を示しています。
(上尾市図書館市民ワークショップ参加申込書より) |
老朽化した図書館本館の今後や、これからの図書館に期待するサービス・設備などを市民の皆さまと一緒に考えるためのワークショップを実施します。 |
この目的を段階的に示すと、次のように考えられます。
[失敗に学ぶのであれば]
上述のとおり、「あげお未来創造市民会議」や「学校施設更新計画基本計画/ワークショップ」を見れば、今までの「ワークショップ」なるものは明らかな失敗でした。
「失敗に学ぶ」のであれば、上記段階の一番上の今回の上尾市図書館のワークショップは、「図書館施策決定への関与としてのワークショップ」としたうえで、「老朽化した本館の今後」や「これからの図書館に期待するサービス・設備など」を考え、施策に反映させるべきです。
[利用者(市民)の参画の具体化]
「施策の実施(利用者の参画)」の段階では、具体的に、どのように利用者が参画するかを考える必要があります。たとえば、「書評合戦(ビブリオバトル)」について、利用者と図書館職員と合同で運営するという方法はどうでしょうか。前回参加した経験では、運営の一部について利用者も担当できそうな気がします。あるいは「読書会」の選書や進行なども出来るのではないでしょうか。
[協働という発想が重要]
「協働」とは、共通の目的を達成するために、図書館側と市民(利用者)がお互いの立場や特性を認識・尊重し合い、対等な立場で、共通する領域の課題の解決に向けて協力・協調する関係をいいます。まさにこれからの上尾市図書館のあるべき姿であると言ってよいでしょう。
[施策の評価では]
「施策の評価」の段階では、利用者の評価を含めての検証が必要です。
実施した施策への評価に加え、利用者アンケートについても、ていねいに説明をしていくことが必要です。とりわけ、利用者アンケートの自由記述欄は「好き勝手に書いたもの」と捉えるべきではないでしょう。
[利用者アンケートへの説明が必要]
今回公表された「利用者アンケート」で言えば、「カフェがあるといい」「大宮図書館や桶川中央図書館の雰囲気が良い」という意見が散見されます。これらについては、図書館運営の方式が深くかかわっていることを説明すべきです。
たとえば、大宮図書館は、25館あるさいたま市立図書館の中で、唯一「指定管理者」が運営している図書館です。現在は桶川中央図書館も指定管理者制度を導入しています。
なお、桶川市は来年度から4館すべて指定管理者制度にするために指定管理者を募集しています。
市立図書館の運営の方式は、次の3つに大別できます。
「直営図書館」(スタッフは市の職員)
「指定管理者制度導入図書館=運営のほぼ全部を丸投げ」
(大宮図書館は、㈱クロスポイントが指定管理者です)
「一部奉仕外部委託図書館」
(カウンター業務等を業務委託。上尾はこの方式で、ナカバヤシ㈱に委託しています)
指定管理者方式では、カフェを併設する場合もあります。
利用者がこうした図書館の運営方式を理解するのは難しいかもしれませんが、基本的なことですので、ていねいな説明が求められます。
🔶上尾市図書館の良い取り組みを継続してほしい
今記事の冒頭で、昨年度から今年度にかけての上尾市図書館の取り組みに注目していると述べました。そのひとつに、「りんごの棚」の設置があります。
このことについては、上尾市HPのトピックスにも掲載されていましたが、いかんせん使われている写真が酷いので、東京新聞の記事(上尾市図書館に視覚障碍者やディスレクシアの人向けコーナー〖今まで本が読めなかった人に、読書の楽しみを〗)が参考になります。
こうした良い取り組みを継続するためにも、教育施設としての上尾市図書館での市民ワークショップの果たす役割は重要であると考えています。なお、ワークショップに参加しての感想等は、後日記事にしてお伝えします。