上尾の図書館は、「指定管理者制度」を導入したいのでしょうか?

 総務省が各県に対しておこなっている調査には、「指定管理者制度の導入」という項目があります。
この調査で上尾市は、市立図書館について「指定管理者制度の導入も含めて検討している」と回答していることがわかりました。

記事NO.58

■総務省が各県に対しておこなっている調査とは?
 埼玉県のHP「県内市町村における地方行政サービス改革に関する取組状況等の調査結果(H30.04.01現在)」では、県内62市町村(さいたま市は別調査)における[民間委託][指定管理者制度等の導入]の調査結果を公表しています。
それによれば、
埼玉県内63市町村(ここではさいたま市を含みます)の図書館総数は153館(分館等含む)。その中で[指定管理者制度]を導入しているのは38館であり、導入率は24.8%となっています。
なお、調査時点で、4町(皆野町・長瀞町・神川町・松伏町)には「図書館」がありません(代わりに公民館図書室などがあります)。

 すでにこの調査以降2年近く経過しているので、調査後に同制度を導入した自治体がある一方で、「学校やその他行政機関との連携、子ども読書活動の推進などの観点から導入していない(熊谷市)」とする自治体も見られます。

■調査への上尾市の回答は?
「指定管理者制度等導入の状況」についての上尾市の回答では、
公の施設数=9館    指定管理者制度導入施設数=0館と計上されており、「前年度以降、導入が進んでいない理由」には、次のように記載されています。
多様なサービスの提供・コスト削減の観点から指定管理制度の導入も含め検討している
もともと、設問自体が総務省によるもので、指定管理者制度の導入を是とする質問であるということを加味しても、上尾市の回答は大変気になるところです。

■なぜ「指定管理者制度導入」が問題なのでしょう?
これについては、数多くの文献が指定管理者制度の問題点を指摘していますが、ブログ筆者が得心したのは、次の説明です。

 図書館という施設の本来的な機能にかんがみ、指定管理者制度を導入することが適当な施設なのか、図書館は地域の知的拠点として地域文化を育て継承していくべき役割を有する施設にもかかわらず、市場原理を導入することが適切なのか
図書館法第2条には図書館の役割が、第3条には図書館奉仕がそれぞれ示されていますが、いうまでもなく図書館は無料貸本屋を行うための施設とされているわけではありません。住民の各種の憲法上の権利(知る権利、学習権、参政権、幸福追求権等)に奉仕するという重要な役割を担っています。
営利目的の団体が、これらの諸権利の実現を目的として当該施設の管理運営にあたるとは到底思えません。(以下略)
鑓水三千男『図書館と法 改訂版』日本図書館協会,2018年,109頁

■上尾市図書館に情報公開請求をしました。
ブログ筆者は、上述の調査に対する上尾市の回答に疑問を持ち、先日情報公開請求をおこないました(公開・非公開は今月中の予定)。
(1) 「県内市町村における地方行政サービス改革に関する取組状況等の調査」についての文書・資料等。※どんな調査内容だったのか知るため。

(2) この調査の回答で「多様なサービスの提供・コスト削減の観点から指定管理制度の導入も含め検討している。」とした経緯が判別できる文書・資料等。

(3) 「検討している」と回答していることから、検討会議等が開かれていることが考えられます。その会議録またはそれに類した話し合いにかかる文書・メモ等。

(4) 「多様なサービス」とは何を指すのかが判別できる文書・資料等。

(5) <上尾市で指定管理者制度を導入すると、どの程度「コスト削減」が見込まれると判断したのか>が判別できる文書・資料等。

(6) 上記文言は「平成30年4月1日現在」となっていますが、それ以降、つまり2018年4月2日から2020年1月31日までに、指定管理者制度について上尾市図書館内部で検討したことが判別できる文書・資料等。

(7) 2020年1月31日以前に、上尾市図書館の利用者および市民から「指定管理者制度」の導入を求める声があるということが判別できる文書・資料等。

◎以上については、結果がわかり次第、お伝えいたします。

 「指定管理者制度」の導入とその弊害については、<TSUTAYA図書館>と言われる佐賀県武雄市図書館などの例や、逆に、直営の図書館で優れた取組をしている図書館もあります。引き続き図書館問題についてはこのブログでお伝えしていきます。

今でも輝きを失わない、ユネスコ公共図書館宣言

 公立図書館は、憲法—教育基本法—社会教育法—図書館法という根拠法令に基づき、教育機関として設置されています。
ユネスコ公共図書館宣言が採択されて四半世紀経過しますが、今でも「宣言」の輝きは失せてはいません。
ブログ筆者は、公立図書館のあり方に強い関心を持っていることから、今記事では、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)公共図書館宣言を引用し、その優れた視点を確認していきたいと思います。

記事No.56

ユネスコ公共図書館宣言 1994年採択
UNESCO Public Library Manifesto
原文は英語

社会と個人の自由、繁栄および発展は人間にとっての基本的価値である。このことは、十分に情報を得ている市民が、その民主的権利を行使し、社会において積極的な役割を果たす能力によって、はじめて達成される。建設的に参加して民主主義を発展させることは、十分な教育が受けられ、知識、思想、文化および情報に自由かつ無制限に接し得ることにかかっている。

地域において知識を得る窓口である公共図書館は、個人および社会集団の生涯学習、独自の意思決定および文化的発展のための基本的条件を提供する。


この宣言は、公共図書館が教育、文化、情報の活力であり、男女の心の中に平和と精神的な幸福を育成するための必須の機関である、というユネスコの信念を表明するものである。

したがって、ユネスコは国および地方の政府が公共図書館の発展を支援し、かつ積極的に関与することを奨励する。

公共図書館は、その利用者があらゆる種類の知識と情報をたやすく入手できるようにする、地域の情報センターである。

公共図書館のサービスは、年齢、人種、性別、宗教、国籍、言語、あるいは社会的身分を問わず、すべての人が平等に利用できるという原則に基づいて提供される。理由は何であれ、通常のサービスや資料の利用ができない人々、たとえば言語上の少数グループ(マイノリティ)、障害者、あるいは入院患者や受刑者に対しては、特別なサービスと資料が提供されなければならない。

いかなる年齢層の人々もその要求に応じた資料を見つけ出せなければならない。蔵書とサービスには、伝統的な資料とともに、あらゆる種類の適切なメディアと現代技術が含まれていなければならない。質の高い、地域の要求や状況に対応できるものであることが基本的要件である。資料には、人間の努力と想像の記憶とともに、現今の傾向や社会の進展が反映されていなければならない。


蔵書およびサービスは、いかなる種類の思想的、政治的、あるいは宗教的な検閲にも、また商業的な圧力にも屈してはならない。


公共図書館の使命

情報、識字、教育および文化に関連した以下の基本的使命を公共図書館サービスの核にしなければならない。
1. 幼い時期から子供たちの読書習慣を育成し、それを強化する。
2. あらゆる段階での正規の教育とともに、個人的および自主的な教育を支援する。
3. 個人の創造的な発展のための機会を提供する。
4. 青少年の想像力と創造性に刺激を与える。
5. 文化遺産の認識、芸術、科学的な業績や革新についての理解を促進する。
6. あらゆる公演芸術の文化的表現に接しうるようにする。
7. 異文化間の交流を助長し、多様な文化が存立できるようにする。
8. 口述による伝承を援助する。
9. 市民がいかなる種類の地域情報をも入手できるようにする。
10. 地域の企業、協会および利益団体に対して適切な情報サービスを行う。
11. 容易に情報を検索し、コンピューターを駆使できるような技能の発達を促す。
12. あらゆる年齢層の人々のための識字活動とその計画を援助し、かつ、それに参加し、必要があれば、こうした活動を発足させる。

* 公共図書館は原則として無料とし、地方および国の行政機関が責任を持つものとする。それは特定の法令によって維持され、国および地方自治体により経費が調達されなければならない。公共図書館は、文化、情報提供、識字および教育のためのいかなる長期政策においても、主要な構成要素でなければならない。

* 図書館の全国的な調整および協力を確実にするため、合意された基準に基づく全国的な図書館ネットワークが、法令および政策によって規定され、かつ推進されなければならない。

* 公共図書館ネットワークは、学校図書館や大学図書館だけでなく、国立図書館、地域の図書館、学術研究図書館および専門図書館とも関連して計画されなければならない。

* 地域社会の要求に対応して、目標、優先順位およびサービス内容を定めた明確な方針が策定されなければならない。公共図書館は効果的に組織され、専門的な基準によって運営されなければならない。

* 関連のある協力者、たとえば利用者グループおよびその他の専門職との地方、地域、全国および国際的な段階での協力が確保されなければならない。

* 地域社会のすべての人々がサービスを実際に利用できなければならない。それには適切な場所につくられた図書館の建物、読書および勉学のための良好な施設とともに、相応な技術の駆使と利用者に都合のよい十分な開館時間の設定が必要である。同様に図書館に来られない利用者に対するアウトリーチ(※)・サービスも必要である。
(※)アウトリーチ=積極的に対象者の居る場所に出向いて働きかけること 

* 図書館サービスは、農村や都会地といった異なる地域社会の要求に対応させなければならない。

* 図書館員は利用者と資料源との積極的な仲介者である。適切なサービスを確実に行うために、図書館員の専門教育と継続教育は欠くことができない。

* 利用者がすべての資料源から利益を得ることができるように、アウトリーチおよび利用者教育の計画が実施されなければならない。

国および地方自治体の政策決定者、ならびに全世界の図書館界が、この宣言に表明された諸原則を履行することを、ここに強く要請する。

◇この宣言は、国際図書館連盟(IFLA)の協力のもとに起草された。

「宣言」は以上です。

 ブログ筆者は、公立図書館の運営主体の問題(指定管理者制度など)にも関心を寄せています。図書館の問題については、今後も記事にしていくつもりです。

 

傾聴に値する、図書館協議会・若松副委員長の発言

 1/10(金)に第4回「上尾市図書館協議会」を傍聴しました。そこでは、「答申」に何とか自分たちの都合の良い文言を入れようとする図書館の事務局側と、法的根拠に基づき、それをやんわりと拒否する副委員長の発言があり、大変興味深いものでした。

記事No.53

■「図書館協議会」とは?
 図書館法に(図書館協議会)として次の規定があります。

第十四条 公立図書館に図書館協議会を置くことができる。
2 図書館協議会は、図書館の運営に関し館長の諮問に応ずるとともに、図書館の行う図書館奉仕につき、館長に対して意見を述べる機関とする。

 つまり、図書館長の諮問に対して、答申の役目を負うのが図書館協議会ということになります。条文に「置くことができる」とありますが、2016年の調査では、図書館協議会(類似の協議会を含む)を設置している自治体は、約70%となっています(出典:図書館流通センター「公立図書館の実態に関する調査研究報告書」)。

 また、次のような指摘もされています。
「図書館協議会では、約7割が指定管理者制度導入に反対している。この点にかんがみても、図書館協議会と指定管理者との親和性は良好とはいえないようである」(鑓水三千男『図書館と法』2018年)

 例えば、桶川市図書館は指定管理者制度を導入しており、図書館協議会は設置されていません根拠:桶川市図書館管理規則

■傍聴していて気づいたこと
 当日の資料は、すべてクリアホルダーに入っており、表に「会議終了後、資料は回収します」とメモ書きされていましたが、ブログ筆者は、これは適切なやり方ではないと考えます。なぜならば、当日の資料は、会議次第・座席表・委員名簿が各1枚ずつ、それにホッチキス留めした『上尾市図書館の在り方検討資料』という内訳になっており、<持ち帰られては困る>のは『検討資料』のみだからです。
傍聴者には説明されていませんが、資料を回収する根拠は、情報公開条例の以下の部分によるものだと考えられます。

(参考)上尾市情報公開条例第7条(公開除外規定)
(6)市及び国等の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に市民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当な利益を与え、もしくは不利益を及ぼすおそれがあるもの

 おそらく、『検討資料』は、条例に謳う「意思決定の中立性」に抵触する、との判断(ブログ筆者はそうは考えませんが)から「持ち帰り不可」とされたと思われますが、会議次第から委員名簿までは、意思決定とは関係ない事項(委員名はすでに公開済み)なので、『検討資料』のみ回収すれば良い話であり、事務局のやり方は<丁寧さに欠ける>と指摘されても仕方ないと思われます。
また、図書館HPには、協議会の傍聴者は「5人」と記述されていますが、実際には、筆者の見た範囲では7~8人の傍聴者がおり、椅子は少なくとも2つ空きがありました。事前の会議予告の傍聴者については、「〇人程度」(〇には7or8が入る)とすべきですし、資料についても、持ち帰りができるものと、そうでないものとに分けることと合わせての次回からの改善が求められます。

■若松副委員長の発言の重み
 ブログ筆者が最も興味深く聞いたのは、事務局側が検討資料の中に次の文言を入れようとしたときの、若松副委員長の発言です。
※ブログ筆者のメモによるもので、検討資料を持ち帰ったものではありません。
(朱書きは筆者によります)

『上尾市図書館の在り方検討資料』
6.留意すべき点

(3)運営体制の柔軟な検討と計画的な職員の育成を
 昨今、指定管理者制度を導入した公共図書館が増えています、平成28年度本協議会では、各計画で掲げられた目標を達成するためには現行の体制を継続することが望ましいとの答申をしています。しかしながら、社会情勢と市民ニーズが刻々と変化する中では、過去の答申に縛られることなく、常に利便性と効率性が高まる体制を模索していくことが求められます
また、どのような運営体制になった場合でも、図書館業務に精通する職員の育成や司書有資格者の配置は適切に行われることを期待します。

 まず最初に、「昨今、指定管理者制度を導入した公共図書館が増えています」という文言については、実証的データを示したうえで記述すべき内容です。ブログ筆者の調べでは、「政令市以外の市(上尾市など)」で指定管理者制度を導入している自治体は、159市であり、全国が772市なので、比率は20.6%となっています(出典:桑原芳哉「公立図書館の指定管理者制度導入状況:近年の動向」,2018年)。
データの本文への挿入が難しければ、「別表」として示すべきです。

 また、「過去の答申に縛られることなく、常に利便性と効率性が高まる体制を模索していくことが求められます」という文言にいたっては、3年前の答申を否定したうえで、あたかも指定管理者制度の導入を是とするような内容となっています。

 事務局側が「滑り込ませようとした」文言について、若松昭子副委員長は、次のような趣旨で発言しています。

 …指定管理者制度については、利点や問題点が両方あり、議論が分かれている状況であるので、「過去の答申に縛られることなく」という表現は考え直したほうがよいのではないか。
(全国で)指定管理者制度が増えていようがいまいが、その良し悪しを(本質的な意味で)判断する必要があると考える。

 ブログ筆者はこれらの発言を傍聴していて、事務局側が「特に何か指摘されなければ、以前の答申の方向性を変更してしまおう」との意図もはっきり見えたことと、それを穏やかに、しかし明確に否定した若松氏の見識に強い共感を覚えました。確かに、指定管理者制度導入に関しては、様々な問題が指摘されています。このブログでも、後日ひとつの記事として掲載しようと考えています。

■言葉の「すり替え」にも要注意
このほか、図書館の事務局側が意識的に言葉のすり替えをおこなっている節が見られます。例えば、第3回図書館協議会での質疑では、次のようなやり取りがされています(公開済議事録によります)。

議長   司書は。
事務局  本館では、正規職員2名、非常勤職員4名である。

 この事務局答弁は、明らかに「すり替え」がおこなわれています。
正確には、「図書館法4条の規定による《司書》という職名は、上尾では一人もおりません。図書館司書の有資格者は正規職員が2名、非常勤職員4名おります」と答弁すべきであったのです。
前記事でも取り上げましたが、図書館法第13条で「図書館には、専門的職員を置く」とされ、同第4条で、その専門的職員を《司書》または《司書補》とする、と規定されていることから、〈図書館司書の有資格者〉とは根本的に違うものであるという確認が必要なのです。

◎専門的職員の職名「司書」「司書補」(以上は残念ながら上尾市には職名そのものがありません)と、〈司書有資格者〉とを混同しないでほしいものです。

■もし、副委員長の発言が無かったら…
 若松副委員長は、司書の問題についても、図書館法に依拠しながら発言しています。前記のことと合わせて、もしも若松氏の発言が無かったら、事務局が滑り込ませようとした文言がそのまま生かされてしまったのではないかと思われます。
 他の委員の発言は、どなたか名前はわかりませんが、たとえば、「分館に孫と行って過ごせるようなスペースが欲しい」など、極めて情緒的なものが目立ちました。せっかくの図書館協議会の場なのですから、根拠法令等をきちっと示したうえで、内容の濃い協議会であることを望むものです。

上尾市議の誰も指摘できなかった! W逮捕の陰で、上尾市図書館でおこなわれた 「不都合な真実」。

前市長・議長W逮捕のドサクサに紛れて、2018年度以降の『上尾市図書館要覧』から「上尾市図書館の基本理念」&「図書館の自由に関する宣言」が消されています。このことは市議の誰一人指摘していません。

記事No.30
※今回は、「図書館の自由に関する宣言」の骨子を掲載してあるため、長めの記事となっています。ただ、大事なことですので、ゆっくりとお読みください。
(PC画面でお読みいただくことを推奨します)

 ■関 孝夫館長のもとで何が起きたのか?
 上尾市図書館による『図書館要覧』は、2018年度から、その体裁や中身が変更されました。図書館のHPに掲載されている要覧(こちら)を参照してください。

 表紙を開けばすぐ気づきますが、2017(H29)年度までは、表紙の次が「上尾市図書館の基本理念」、次ページに「図書館の自由に関する宣言」が掲載されていたものが、2018(H30)年度以降は「上尾市図書館の基本理念(以下、この記事では「基本理念」)」と「図書館の自由に関する宣言(以下、「宣言」)が丸ごと消されているのです。

 館の住人(このブログの筆者)は、「なぜこのようなことが起こったのか、その理由が知りたい」ということで情報公開請求をおこないました。その結果は、「決裁文書はあるが、起案の理由が書かれていないため、文書不存在」との処分が下されました。
基本理念」や「宣言」を丸ごと消してしまうのは大幅な変更ですが、その理由を書かずに決裁し、職員もハンコを押してしまうというのは、「ある強い意思」が働いたと考えるのが極めて自然です。

 2018(H30)年度の上尾市図書館長は、関 孝夫 氏でした。同氏は1年間だけ図書館長を務めた後、2019年度は 学校教育部参事 兼 学校教育部次長 となっています。たった1年だけ図書館長に就いたのでは、ほとんど何もできないだろうと誰もが思うでしょう。
しかしながら、前記の事実を重ね合わせたうえで考えると、関氏は、上尾市図書館要覧から「基本理念」や「宣言」を丸ごと消してしまうという〈大きな仕事〉をするために図書館長になった、とも言えます。

■「上尾市図書館の基本理念」とは?
ここで、あらためて「上尾市図書館の基本理念」を見てみましょう。

  くらしに役立ち、市民とともに歩む図書館

  〇誰もが本と出合うよろこびを感じられる
              居心地の良い図書館
  〇くらしに役立ち、
        市民の知る権利を保障する図書館
  〇市民文化創出の礎(いしずえ)になる図書館   

  を目指して市民とともに歩んでいきます
                                                                          上尾市図書館

■「基本理念」の何が気に入らないのでしょうか?
 このとおり、「基本理念」はとてもわかりやすい言葉で書かれています。これを『図書館要覧』から消したいと思ったのはなぜなのでしょうか。
◇「市民とともに」が繰り返されているから?
◇「知る権利を保障する」と書いてあるから?
もしもそういう理由で消したとしたら、到底市民としては理解も納得もできるものではありません。

■「図書館の自由に関する宣言」の骨子とは?
では、消された「宣言」のほうを見てみましょう。
再度、図書館要覧(こちら)を参照してください。
1979年改訂宣言は、憲法が定める国民主権の原理と表現の自由によって、図書館を国民の知る自由を保障する機関として位置づけています。「知る自由」は、表現の送り手の自由と表裏一体をなすものであり、すべて国民は、いつでも必要とする資料を自由に入手し、利用する権利をもっていることを確認し、その権利を社会的に保障する責任を図書館は負っていると述べています。
また、図書館利用に関していかなる差別もあってはならないこと、それは外国人についても同様でなければならないとし、こうした「図書館の自由」に関する原則は、「すべての図書館に基本的に妥当する」と述べることで、どの館種の図書館にもあてはまるという考えを示しています。

 「収集の自由」とは、図書館が自らの責任で作成した収集方針に基づいて行う資料収集が、ほかからの圧力や干渉によって歪められることがあってはならないということで、そのためには図書館が行う資料収集の原理が国民に明らかになっていなければなりません。 第1項ではその原則として、「多様な、対立する意見のある問題については、それぞれの観点に立つ資料を幅広く収集する」などを掲げ、さらに収集方針を成文化し、公開することで広く社会の批判と協力を得るとしています。
 図書館に収集された資料は、すべて国民の自由な利用に供されねばなりません。宣言はそのことを確認した上で、人権やプライバシーを侵害するもの、わいせつ出版物であるとの判決が確定したもの、寄贈者・寄託者が公開を非とする非公刊資料については、提供を制限することもあり得るとしています。ただその場合も、その措置は時期を経て再検討すべきだし、資料そのものはきちんと保存することの重要性などを提供の自由についての第2項で述べています。
 読者が何を読むかは、個人の内面の自由に深くかかわるプライバシーに属することです。そのため図書館は、貸出記録をはじめ利用者の読書事実、利用事実を他に漏らすことがあってはなりませんし、その責務は図書館活動に従事するすべての職員に課されているというのが第3項「利用者の秘密を守る」の内容です。この項目は、1979年改訂ではじめて主文に取り上げられた事項です。憲法第21条第2項が、「検閲は、これをしてはならない」と明確に禁じていることから、現代の日本では国民の知る自由を侵す検閲は存在しないはずですが、現実には検閲に近い行為、「検閲と同様の結果をもたらす」ような干渉があとを絶ちません。 そうした事態は、自由な図書館活動とあい容れないので、「図書館はすべての検閲に反対する」ことを第4項で述べています。
 最後の結びにおいては、図書館の自由の状況は、民主主義の進展の重要な指標であると述べ、もし図書館の自由を侵害するような事態があれば、図書館は互いに力を合わせて闘うし、そのことで共通の立場に立つ団体や人々と連携することで、「図書館の自由を守る努力を不断に続ける」との決意を示しています。
※以上の骨子については、塩見 昇他編 『図書館概論 五訂版』日本図書館協会,2018年,P59-60を引用・参照しました。

■ハコものだけでない、教育機関としての図書館
 以上見てきたように、私たち市民にとって図書館は市民の「知る権利」や知の集積という点で、とても大切です。新図書館建設問題以来、ともすればハコものに論議が集中する傾向がありました。もちろんそのことも大変重要ですが、W逮捕に象徴される事件や不祥事の陰で、行政による恣意的とも言うべき事態が進行していることも、市民は忘れてはならないでしょう。
さらに、こうした事実を指摘できる市民的視座に立った議員が現れることを切望します。

情報公開請求で判明した事実。上尾の図書館には「司書」も「司書補」もいない!!

<上尾市の図書館には、専門的職員としての「司書」や「司書補」は置かなくてもよい>という上尾市教委の姿勢が、はからずも露見しました。

記事No.25

情報公開請求で判明
上尾の図書館については、従前から数々の疑問があります。例えば、専門職員としての図書館司書が上尾の図書館には配置されていないのではないか? あるいは、図書館長は司書資格を持っているのか?などの問題です。今回、情報公開請求とその処分(職員課と図書館による口頭説明)によって、そうした疑問のいくつかが判明しました。同時に、解決すべき様々な問題も出てきています。
今記事では、その一部についてお伝えします。

決算特別委員会審査報告(2018.09.27)より
 まず、こちらの会議録をごらんください(会議録の真ん中あたり)。ここで注目するのは、昨年9月の上尾市議会決算特別委員会審査報告での、平田通子委員と島田栄一図書館次長(昨年当時。現在は図書館長)とのやり取りです。

平田委員:図書館は司書が職員の中に何人の方がい らっしゃるのか。

島田次長:職員の中で司書の資格ということでございました。昨年度は…5名…今年度は…2名…(以下略)

 このやり取りの数日後、平田委員は総括意見として次のように述べています。

図書館も職員の中では司書が2人しかいないということは驚きでした。

■「ツッコミ」が足らない質問
 平田委員の質問は、観点は良いのですが、法令や根拠等を示したうえでの質問という意味では不足です。
 この問題を取り上げるのでしたら、最初に図書館法第4条を示す必要があります。

≪図書館法≫
(司書及び司書補)
第四条 図書館に置かれる専門的職員を司書及び司書補と称する。
 2  司書は、図書館の専門的事務に従事する。
 3  司書補は、司書の職務を助ける。

そこで、こういう質問をするべきでした。

 図書館法第4条に定められている、専門的職員としての「司書」及び「司書補」は上尾図書館には何人配置されているのですか?

この質問には、答弁者はさすがに嘘はつけないので、次のように答えるしかありません

 上尾図書館には、「司書」や「司書補」という職名の職員はおりません。

 こうしたことを前提にして初めて、「なぜ上尾図書館には司書はいないのか?」「専門的職員を配置せずに、教育機関としての図書館の方向性をどう考えるのか?」などの議論が発展していくのです。

 そういう質問をすれば、当時の島田次長が「職員の中で司書の資格ということでございました」などと、質問と答弁をすり替えることもなかったのです。 「司書は何人か」と尋ねられたら、「司書という職名の職員はおりません」と答えるしかありません。
そうした答弁を避けるために、島田次長は「司書有資格者」のことを持ち出したのであることは明白です。

子どもの読書活動としての図書館の役割
さらに、専門的職員としての司書・司書補は、子どもの読書活動を推進する役割を担っています。その議論を発展させるためには、昨年の5月に文科省から発出された告示を示すことが有効です。

◇2018年4月 文科省告示第73号「子供(原文ママ)の読書活動の推進に関する基本的な計画」より

P14. Ⅲ 地域における取組  1 図書館 (1)図書館の役割    「(図書館は)保護者にとっても、子供に読ませたい本を選択したり、子供の読書について司書や司書補に相談したりすることができる場所である」

P18. (4)司書及び司書補の専門的職員の配置・研修
①司書及び司書補の適切な配置
司書及び司書補は、児童・青少年用図書等をはじめとする図書館資料の選択・収集・提供、読み聞かせ会等子供の読書活動の推進に資する取組の企画・実施、子供の読書に関する保護者の相談への対応等、子供の読書活動の推進における重要な役割を担っている

「公立図書館の職員の配置については、地方交付税措置が講じられており、都道府県及び市町村は、司書及び司書補の専門性やその役割の重要性について改めて周知を図り、積極的な配置を促す

 こうした文科省の告示等を示したうえで、図書館側から「今後は、この方向で取り組みます」という答弁を引き出すのが市議の役割ではないでしょうか。

◇<図書館に専門的職員としての「司書」を置かなくともよい>という発想は、結局は上尾市民の持つ
≪図書館リテラシー(理解、分析、活用する能力)≫を過小評価しているからと言わざるを得ません。

◎上尾の図書館問題は、まだまだ問題点や課題が多くあり、現在情報公開請求をすすめているところです。今後も引き続きみなさんにお伝えしていきます。

 

 

図書館行政について ー5/1を休館日にした本当の理由ー

記事No.14

■知る権利
  国民にとっての『知る権利』とは、憲法で定める基本的人権のひとつであると言えます。また、一般的に『知る権利』というと、情報公開制度と結び付けて考える場合もありますが、一方では、私たち市民がさまざまな情報や文化的資料等を入手しようとする意味での『知る権利』を行使する際に「図書館」の果たす役割は多大なものがあります。
 図書館に関する法律としては「図書館法」があり、その直接の根拠は「社会教育法」第9条に<図書館及び博物館は、社会教育のための機関とする>と定められていることによります。そのため、上尾市教育員会のHPにも「図書館計画」が記載されています。
館の住人(このブログの筆者)も、図書館をよく利用します。そのほとんどは上尾市図書館(本館)か、県立図書館(久喜)です。
上尾市図書館は、市議会でも問題になった「ガラスブロック落下防止工事」の関係でつい先日ま
12日間臨時休館でしたが、図書館利用者にとっては「休館日」がいつなのかが気になります。

■「休館日」から見えてくる「上尾市図書館の真実」
 上尾市図書館は、通常月曜休館で、それ以外(年末年始など)は図書館のHP等で通知されています。その他の理由(上述のような館内工事など)の際は、イレギュラーな形での臨時休館となります。
少し前になりますが、2019.05.01(新天皇即位日)を、上尾図書館は休館日としました。
上尾の図書館だより「はる号(4・5・6月号)」の 「図書館カレンダー」には、「5月1日(水・天皇即位の日)は全館休館します」とだけあり、これが表向きの「理由」のようでした。貸出のカウンターにも同様のメモが置いてあり、係の方からは「5月1日は休館です」と口頭で告げられただけでした。
 調べてみると、近隣市町の05.01
の開館状況は、さいたま市(改修中1館を除く)、桶川市、伊奈町、川越市、県立図書館(久喜・熊谷)いずれも開館。
「天皇即位日」との理由で休館としたのは、草加市(志木市も休館でしたが、その理由は「館内整理のため」)。
つまり、県内の図書館がおしなべて05.01を休館としたのではないのです。
 きちんとした理由を知りたいので、情報公開請求により、起案・決裁文書等の開示を求めました。

■休館の「本当の理由」は、カウンター業務にあたる職員のシフトの問題 
 公開された「起案・決裁文書」により、次のような事実が判明しました。

(1)上尾市図書館規則に従えば、2019.4.23から05.12まで連続で20日間開館することになり、今までそのような長期連続開館の前例は無い。

(2)カウンターの業務は「上尾市都市開発株式会社」と委託契約を締結し、同社スタッフ(全員女性)が従事している。図書館に勤務の傍ら、育児や介護にあたる者が少なくない。

(3)05.01を休日とする法律の付帯決議に、「当該期間中の長時間労働の抑制」が言及されている。

(4)連休中は帰省等によりシフト勤務できるスタッフ数が限られる。

(5)「上尾市都市開発株式会社」からは、当該期間中の勤務ローテーションを組むには困難な部分がある旨、相談が寄せられている。

 以上のことから、05.01は「天皇即位の日」だから休館にしたわけではなく、カウンター業務にあたるスタッフの勤務シフトの問題であったのです
ここには≪上尾市図書館が非正規のスタッフに頼らざるを得ない≫という、図書館利用者には見えにくい「上尾市図書館の真実」が見えてきます。

■上尾市教委は、非正規職員に依拠しなければならない実態を検証すべき 
 上尾市図書館規則で「(図書館長は、特別の事情があるときは)臨時に休館日を定めることができる」とされていることから、今年の長期連休については、4/305/7を休館にすべきであったのではないでしょうか(今さら遅いですが)。
上尾市図書館を、利用者のためにこれからどのようにしていったらよいのかを考えるとき、職員や現場スタッフの問題を抜きにして図書館のあり方を論じることはできないと思われます。
 そのためには、市民のための社会教育を担う役割がある上尾市教育委員会は、現在のような非正規職員に依拠せざるを得ない実態をすぐにでも検証すべきであり、市民の目線に立った図書館にしていくための努力をすべきです。
 利用者が情報や文化的資料、様々な文献等を入手しようとするときに、
知の集積としての「図書館」の果たす役割は重要です。
 実は、上尾市図書館には、今回触れた「休館日」以外の問題や課題も多々あります(たとえば、「レファレンス・サービス」の問題や、図書館非正規スタッフを束ねている「上尾市都市開発株式会社」にまつわる問題など)。それらのことについては別の稿で指摘し、問題提起していきたいと考えています。

 加えて、「非正規スタッフに依拠している」実態は、図書館に限ったことではなく、上尾市立学校の現場でも同様なことが起こっています。県費負担の教職員(正規職員)ばかりでなく、市費の臨時的職員や支援員(非正規職員)が今の学校を支えていると言っても過言ではありません。そのことについても後日お伝えしたいと思います。